15万打リクエスト

□キスから始めて
2ページ/5ページ


そこでふと、隣の静雄が徐々に臨也に近づいて来ているのに気がついた。

「何、シズちゃん」

その何処か緊張したような様子に、そのての色を孕ませて小さく笑って見せれば、静雄は怪訝そうに眉をしかめながらも、臨也の手首を取った。
肉付きの悪い細い腕は、それを掴み引き寄せてまじまじと見る彼の骨張った男らしい腕と、似ても似つかない。
静雄はその手首を落ち着かずに見詰めると、長い沈黙の後、
迷ったような色を隠しながら、ようやく口を開いた。

「手前、ちゃんと飯食べてるのか?」

「…は?」

散々人の手首を見ておいて、結局はそんなことか。
…期待して損をした。

「あのさ、俺は立派な成人だよ?
食事の心配を、どうしてシズちゃんなんかにされないといけないの」

毒々しく言った臨也は静雄を見上げ。
――先刻、静雄が押し込んだ言葉を悟った。
…否、元々、言葉など発するつもりでも無かったのかもしれない。

掴んで、引き寄せて。
その先に、恋人同士がすることと言えば?


静雄の唇が、臨也の唇に触れた。
緊張した顔が垣間見えたものの、重ねられた唇にすぐに瞼を閉ざす。

優しい、優しい口づけ。
…ねぇ、そんなのじゃ満足しないくせに。

臨也は恥じる気持ちを堪えて、開いた唇から熟した果実のように赤い舌を覗かせ、静雄の唇を舐めた。
…すると静雄もその意味に気がついたのか、唇を開くとその小さな舌を口腔に取り込む。

「ん…ふ……ぁ、う…」

シズちゃんのキスは、堪らない。
まるで俺を熟知しているかのように、淫らに余すところなく俺を舐めとかす。
歯を立てられて、臨也は思わず震えた。
臨也の舌から唇まで、静雄は激しく、だけど丹念に、蹂躙する。
それだけで、腰の力が無くなっていく。
何処で、こんな淫猥なキスを覚えたのやら。

――そこで、ふ、と気になった。
本当に、このキスは何処で学んだのだろう。
初めて唇を重ねた頃から、こんなキスだった気がする。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ