15万打リクエスト

□Sweet Taste
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真実だったら、大分厄介だ。そんな目に遭うなんて、御免被る。
…でも、新羅が言うに、知り合いにしか効かないはずだ。
そのフェロモン体質が真実かは置いておいて、取りあえず知り合いに会わなければいい。
そういうことにして、臨也は溜め息を吐きながら歩き出した。


…でも、そういうときに上手くいかないのがお約束。

街中を歩く臨也の頭に、突如コンビニのゴミ箱が吹っ飛んできた。
あまりに突然のことに、避けることすら出来ずアスファルトに叩きつけられる。
痛みを堪えて起き上がれば、目の前には見慣れたバーテン服があった。

「よぅ、臨也君よォ」

いつもの苛立ちをまざまざと滲ませた静雄の顔。
…なんだ、効かないじゃん。
そう安心して、立ち上がろうとした時だった。

突然、静雄が臨也に鼻を寄せる。
そして次の瞬間には、静雄に手首を掴まれていた。

「変な臭いがしやがる、と思ってれば、やっぱり手前だったか」

「…へ?」

きょとん、とする臨也に構わず、静雄は臨也を引っ張って立たせると、突然予想すらしなかった言葉を紡いだ。


「好きだ」


「は?」

シズちゃんが俺を好き?ありえない。と言うか、会話に脈絡が無さすぎる。
…其処でハッとした。
新羅の薬が、確かに効いているのだという事実に。

「馬鹿じゃないの!?
薬ごときに騙されるシズちゃんとか、気持ち悪い!離せ!」

「何言ってやがる、俺が嘘つくとでも思ったのか?」

何を言っても聞かない静雄。
逃げなければ。
臨也は、一瞬の隙をついて静雄の腕を振り払うと、駆け出した。
後ろから静雄が追いかけてくるが、必死に逃げる。
静雄がこんなにも怖いと思ったのは、初めてかもしれない。

どうにか静雄を撒いて、臨也はビクビクしながら家路を急いだ。
どうやら薬の効き目は真実らしい。
新羅に苛立ちながら、臨也はひたすらに歩を進めた。
露西亜寿司の前を通れば、サイモンに「今日も可愛いネ!」なんて言われて、思わず全力で逃げ走った。

厄介で、すごく面倒臭い。
シズちゃんやサイモンに好かれるなんて、たまったもんじゃない。
…でも、ドタチンなら。
ふと思って、邪な自分に頭を振った。

ドタチンが好き。
でも勿論、本人に言うには勇気が足りなくて、もう何年と言えないまま。
それでも、気持ちは落ち着きを見せないのだから、大したものだと思う。

ドタチンにフェロモンが効くなら、この体質も悪くない――


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