15万打リクエスト

□その跡に、
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臨也は、何時ものように帰宅した。
数ヵ月前は一人きりだったこの部屋には、今はもう一人いる。

「臨也、おかえり」

「ただいま、サイケ」

サイケデリック。俺に酷似した、でも性格は全く違う彼が、いる。

部屋を歩いていく臨也の後ろを、サイケは嬉しそうについて歩く。
臨也の漆黒とは対照的な白とピンクのコントラストは、見ているだけで楽しくなりそうで。
サイケは、まるでその色を性格にまで映したように明るい。

「お仕事おつかれさま、大変だった?」

「別に、いつも通りだよ」

そう答えた臨也の首筋に、サイケは赤い跡があるのに気がついた。

サイケは、子供のように無邪気だ。
知識も、臨也ほどあるわけではないが――その跡が、何かは分かる。


「静雄に、会ってきたの?」


サイケの言葉に、臨也は眼をぱちくりとさせながらも、頷いた。
やっぱり。そう口をつぐんだサイケを気にして、臨也は口を開く。

「別に、怪我はしてないよ?
タイミングをはかり損ねたりした時しか怪我しないし」

「…ちがう」

サイケの拗ねたような声音に、臨也は早々に宥めるのを切り上げた。
きっと、これ以上何かを聞き出そうとしても、口を開くまでに時間がかかるだろう。

「大トロ買ってきたけど、サイケも食べる?」

仕方無さげにそう言った臨也に、サイケの顔がぱあっと明るくなる。

「食べる!サイケ大トロ好き!」

リビングへ歩いていく臨也に、サイケはスキップしながら付いていった。


臨也は、サイケのことを子供だって思ってるけど。
臨也が思ってるよりも、サイケは子供じゃないよ。
だって、臨也が好きだもん。
静雄とセックスしてきた臨也にイライラするのは、嫉妬でしょ?
お寿司なんかよりも、臨也が欲しいよ。臨也が大好きだよ。

でも、もしサイケが臨也に好きって言ったら、サイケと臨也はぎくしゃくしちゃうかもしれないでしょ。
知ってるもん。サイケは、知ってる。
臨也が静雄を大好きで、静雄も臨也を大好きだって。
だから、我慢してるんだよ。
いい子いい子して欲しいな。
でも、サイケは子供じゃないんだよ。



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