15万打リクエスト
□愛情アンダンテ
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臨也は、いつものように静雄の家に遊びに来ていた。
池袋では喧嘩をしている場面をよく見かけるが、
実はそれ以上の関係、なんて、誰が想像するだろう。
「やぁ、シズちゃん」
態とらしい程、にこやかな笑みを向けながら上がり込んだ臨也をさして気にする事もなく、静雄も普通に招き入れた。
俺とシズちゃんは、付き合っている、のだ。
世間一般では、男同士のカップルすら希有なのに、況してや外では仲の悪い二人が付き合ってるなんて誰も信じられないだろう。
知っているのは、高校時代絡みのあった門田と新羅くらい。
彼との現状に不満は無い。
…そう言えば、嘘になる。
「…おう」
静雄は煙草を吹かしながら、素っ気なく返した。
シズちゃんは、見ての通り素っ気ない。
それが彼だということは重々承知してはいるのだが、恋人にくらいもう少し親しくしてくれたって良いんじゃないか、と思ってしまう。
…我が侭だっていうことは、分かっているけれど。
だから今日は、ちょっとだけちょっかいを出してみる。
「あのね、昨日ドタチンに会ったんだけどさ、」
わざと明るい声で突然話し始めた臨也に、静雄が横目で視線を向けた。
よし、掛かった。臨也は心中で思いながら、続けて話す。
「仕事の時に不意打ちされて怪我してたんだけど、ドタチンが手当してしくれてね、
しかも、俺がお昼食べてないって言ったら、奢ってくれたんだよ!」
臨也が嬉しそうに話すうちに、静雄の顔が険しくなってくる。
それが嬉しくて、ニコリと満面の笑みを溢した臨也は言った。
「ドタチンみたいな彼氏が欲しいなぁ」
バンッ
振り上げられた静雄の手が、壁を叩いた。
平手に関わらず壁は拳で殴ったかのような穴が空いている。
驚いたものの、まんまと臨也の言葉に惑わされた静雄に、再び声をかけようとした時だった。
静雄の鋭い瞳が臨也を射抜き、思わずびくりと震える。
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