30万打小説

□ONLY ONE
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「…もう少し優しくしてよ、新羅」

「煩いな。君たちの勝手で出来たものの手当てをする僕の身にもなってよ」

新羅はそういいながら、消毒を染み込ませた脱脂綿を首筋の傷跡に押し付ける。臨也は顔をしかめて、痛い、と喚いた。
その歯形の周りに散る鬱血は臨也が静雄と何をしていたのか一目瞭然で、金を渡されなければ絶対に手当てなんかしてやらなかったのに、と溜め息を吐いた。


***

なんでそんな関係なの?虚しくないの?嫌じゃないの?それでいいの?
もし誰かにそう尋ねられたら、俺はきっと真顔で、若しくはにわかに笑って、だから何、って顔をして答えるだろう。
「別に?」って。
嘘じゃない。嫌だったら拒むし、虚しかったらケリをつける道を進む。少なくとも何の脚色もないリアルな言葉だと思う。

…まぁ、今考えていることが必ずしも奥深く真相心理に貫かれた感情とは限らないんだけどさ。


「今からするってのに、何ぼんやりしてるんだよ、手前」

静雄の低い声に引き戻されて、臨也は瞬きをひとつしてから妖艶に笑って見せた。臨也の胸元をまさぐる静雄の手がぴたりと止まる。

「やだな、俺がもし他の男のこと考えてたとしても、シズちゃんはなぁんとも思わないだろ?何考えてたっていいじゃん」

――もし、俺とシズちゃんが百歩譲って恋人だったら、独占欲の強いシズちゃんは本気で怒るだろう。
静雄は、眉をしかめながら再び臨也の白亜の肌に指を這わせた。不健康にすら見えるきめの細かい生白い肌で存在を主張する蕾に指が触れ、臨也はこくりと喉を鳴らす。

「そんなん、俺が関係あるわけねぇだろ。でも、気が逸れて感度悪くなるなら止めろ。他の奴の名前言うのとかも、萎える。あと、声出せ」

薄い唇から発された利己的な言葉に、臨也は動揺することなく片頬を吊り上げて笑って見せた。

「じゃあ、声、押さえちゃおう、かな」

「手前は淫乱だから無理だろ」

不敵に笑った静雄は、臨也のシャツをたくしあげ、まだ軟らかい蕾へ口付けをした。途端にびくんと臨也の身体が跳ね、静雄のシャツを握り締める。
手前、乳首弱いからな。うっさい、変態。
ぶっきらぼうに吐き捨てた臨也だったけれど、静雄が本格的に愛撫を始め、息を詰めた。

他人から見れば、きっと不思議な関係なのだろうとは思う。
恋愛としては好きじゃない。寧ろ喧嘩相手。でも、互いに独占したがって、その上に肉体的な関係が成り立っている。
嫌いじゃあ、ないけどさ。

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