30万打小説

□寒い1日の過ごし方
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「それ、静雄くんのジャージじゃないか。忘れたの?」

「そう。シズちゃんが貸してくれた」

下駄箱で新羅と会い、そんな会話をしながら歩き出す。
ふぅん、静雄くんがねぇ。新羅は静雄のジャージ、元い臨也が静雄のジャージを着ていることに目を向けながら唇を尖らす。

「何、その顔」

尋ねれば、新羅は臨也の胸元の、平和島と書かれた文字を摘まんだ。そして、眉間に皺を寄せて駄々っ子のように口を開く。

「気に入らないな」

「…何で?」

「何でって…僕の名前じゃないのが」

意味が分からない、そう言いたげな臨也に、鈍い奴、と言いたげな新羅。
その表情に、臨也は新羅を訝しげに見つめる。当の本人の新羅は、ふと頬を緩めた。

「分かんなくていいよもう。臨也のそういうところ呆れるけど、嫌いじゃないし」

「なにそれ。…ああ、新羅もシズちゃんが嫌いってこと?」

「違うよ。静雄くんは友達じゃないか」

ますます訳が分からない状況へ陥る臨也を、新羅は笑った。自分ばかりが馬鹿にされているようで気に食わない臨也は、じゃあ新羅のジャージも着てあげようか、と低く唸る。しかしまた、だから違うって、と否定された。

「もういいよ。僕も寒いの嫌だし。
あのね、僕は、ジャージくらい僕に借りに来て欲しかったんだよ。中学生からの付き合いなんだからさ」

「だってシズちゃんが先に貸してくれたんだもん、断る理由もないし。それに、体格差的にシズちゃんのが大きいから指まで隠れるしね」

「…そうだね。て言っても、臨也よりは俺の方が背は高いけど」

「不服だよ本当に」

新羅がケラケラと笑うのをやはり不満を滲ませて横目に彼を見ていれば、向こうから二人の名前を呼ぶ声がした。聞き慣れた声はこの中で一番背の高い門田のもので、臨也は嬉々とした声で、ドタチン!と彼に走り寄っていく。
新羅も手を振りながら、門田と臨也、そして静雄のいるその場所へ歩いた。

「全く…光風霽月が恨めしいよ」


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