30万打小説

□似た者ワルツ
1ページ/4ページ


「もしもーし」

『もしもし。…つーか、毎日電話してきやがって。さっきまでメールもしてたってのに』

「何?不満?」

『…不満じゃねぇけど、仕事サボってんじゃないだろうな』

「大丈夫だよ、シズちゃんじゃあるまい」

『俺はサボってねぇ』

そんな、友人同士のような会話を続け、数分後ようやく切った。
臨也は、静雄との繋がりの切れた携帯画面を眺め、ポケットに収める。
それから、スキップで歩き始めた。

静雄と付き合い始めて、早いもので一ヶ月を過ぎた。
今まで互いを貶し合い喧嘩をしてきた年月に比べれば、幾分と短い。けれど、それも後悔はしていない。此処までくるのには必要な年月だったと思える。
きっと、静雄を好きだと気がつく前の自分なら、今の状況を気持ち悪いと顔をしかめるに決まっているけれど。
今が幸せなら、過去は過去。それでいいと思える。我ながら気色悪い。

と、不意にポケットの中の携帯が震えて電話の着信を告げる。パッと浮かんだのは、先刻まで電話をしていた彼の姿。
――しかし、見てみれば新羅で。

『もしもし、臨也?』

「…何」

『セルティに依頼されてた仕事の件なんだけど、…っていうか、テンション低くない?僕との会話がそんなに嫌?』

「別にそうじゃないけど、新羅との会話は望んでないし、聞いても嬉しくないし」

『…親しき仲にも礼儀ありって言葉、君は知ってるかい?』

――それから新羅との会話を終え、再び携帯を仕舞う。
何てややこしいんだ。期待して損をした。新羅なんかと電話をしても、何も嬉しくもない。シズちゃんからの着信だけ、直ぐに見分けがついたらこんなテンションが下がることもないのに――

「…そうだ」

わざとらしく手を叩いた臨也は、得意気ににんまりと笑うと、再びスキップで歩き出した。



***
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ