30万打小説

□束縛愛。
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…しかし臨也の心情がどうであれ、次の日はやって来る。矛盾も小さな希望も、その無機な快楽さえも余すことなく引き連れてやって来る。
縛られた手首と一緒に胸がじりじりと焼かれるように痛い。

「あっ、あぁ…!ん、ふあ…」

「もう、この太さじゃ足りないんじゃねぇか?3日連続でヤれば、こんなに緩くなるんだな」

「う、るさ…っああ!」

蠢く異物が煩わしい。こんなのじゃ嫌なのに。こんなのじゃなくて。

シズちゃんじゃなきゃ、いや。

静雄が唐突にポカンとした。ハッとしたときにはもう遅い。無意識のうちに、それは言葉として唇から零れていた。
にや、と不敵な笑みを溢した静雄。――しかし、確かに一瞬、その瞳に苦し気な色が浮かんだのを、臨也は見逃さなかった。

「それなら、どうして欲しいか言ってみろよ」

「…っ」

「言わねぇなら、このままだ」

静雄は囁き、玩具を臨也の奥へ突き入れる。走った甘い感覚に跳ね、臨也は唇を噛んだ。
恥ずかしい。恥ずかしくてたまらない。そんな弱味を握らせるような真似、できない。できるはずがない。

「なら、シズちゃんは…どうしたいの」

口に出してから、不毛な問いかけだと思った。静雄が今まで、したくないことを進んでやってきたことがあったか。
…それなら、今していることこそが本当にやりたいことか。淫具で喧嘩相手を弄んで最後に愛の言葉を囁くことが、やりたいことだと言うのか。
静雄を睨み上げる。潤んだ瞳にどれほどの威力があるかは知らないが、答えを求めて睨んだ。

「…何がしたいと思う」

「知らないから訊いてる」

「知ってどうする」

「その時による」

「…手前は狡いな」

静雄の瞳が臨也を睨み付ける。怯むことなく負けじと睨み返した。
――しかし、静雄は笑った。するり、と臨也の頬を撫でた掌は冷たく固い。それは頬から耳へ柔らかな髪を撫で、顎のラインを辿ると唇へたどり着いた。
静雄の親指が、臨也の唇を抉じ開ける。唾液に濡れた舌を指で絡めた。

「手前が、俺の欲しい言葉を言え」

真剣な声。普段と違い、何処か不安そうな響きさえ孕んで、臨也の鼓膜を揺らした。
どんな、と聞き返すように静雄を見やり、指を噛む。静雄は顔をしかめることもなく言った。

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