30万打小説
□束縛愛。
2ページ/5ページ
…しかし臨也の心情がどうであれ、次の日はやって来る。矛盾も小さな希望も、その無機な快楽さえも余すことなく引き連れてやって来る。
縛られた手首と一緒に胸がじりじりと焼かれるように痛い。
「あっ、あぁ…!ん、ふあ…」
「もう、この太さじゃ足りないんじゃねぇか?3日連続でヤれば、こんなに緩くなるんだな」
「う、るさ…っああ!」
蠢く異物が煩わしい。こんなのじゃ嫌なのに。こんなのじゃなくて。
シズちゃんじゃなきゃ、いや。
静雄が唐突にポカンとした。ハッとしたときにはもう遅い。無意識のうちに、それは言葉として唇から零れていた。
にや、と不敵な笑みを溢した静雄。――しかし、確かに一瞬、その瞳に苦し気な色が浮かんだのを、臨也は見逃さなかった。
「それなら、どうして欲しいか言ってみろよ」
「…っ」
「言わねぇなら、このままだ」
静雄は囁き、玩具を臨也の奥へ突き入れる。走った甘い感覚に跳ね、臨也は唇を噛んだ。
恥ずかしい。恥ずかしくてたまらない。そんな弱味を握らせるような真似、できない。できるはずがない。
「なら、シズちゃんは…どうしたいの」
口に出してから、不毛な問いかけだと思った。静雄が今まで、したくないことを進んでやってきたことがあったか。
…それなら、今していることこそが本当にやりたいことか。淫具で喧嘩相手を弄んで最後に愛の言葉を囁くことが、やりたいことだと言うのか。
静雄を睨み上げる。潤んだ瞳にどれほどの威力があるかは知らないが、答えを求めて睨んだ。
「…何がしたいと思う」
「知らないから訊いてる」
「知ってどうする」
「その時による」
「…手前は狡いな」
静雄の瞳が臨也を睨み付ける。怯むことなく負けじと睨み返した。
――しかし、静雄は笑った。するり、と臨也の頬を撫でた掌は冷たく固い。それは頬から耳へ柔らかな髪を撫で、顎のラインを辿ると唇へたどり着いた。
静雄の親指が、臨也の唇を抉じ開ける。唾液に濡れた舌を指で絡めた。
「手前が、俺の欲しい言葉を言え」
真剣な声。普段と違い、何処か不安そうな響きさえ孕んで、臨也の鼓膜を揺らした。
どんな、と聞き返すように静雄を見やり、指を噛む。静雄は顔をしかめることもなく言った。
.