30万打小説

□束縛愛。
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頬に走った痛みに呻く。
一度零れ落ちた意識が、馬鹿力の拳に無理矢理引き戻された。

「イったからって勝手に落ちるんじゃねぇよ、臨也」

「っあ!も、やだぁあ!あッ、ひぁ!」

痛い。くらくらする。熱い。
なのに、気持ちいい。
自分は壊れてしまっているのだろうか。こんなにも乱暴な行為に快楽を感じるだなんて。
体内がドクドクと脈打つ。無理矢理埋め込まれ臨也の体内で暴れる淫らな玩具は、熱いほどの体温に包まれ熱を持っている。ただ違うのは、幾ら臨也が締め付けても、大きくなりもしなければ、何も出さないということか。
そんな物に体内を貫かれて幾度も射精している自分の惨めさに腹が立つ。いくら感情が苛立ちを見せようとも、身体も同じように反抗するとは限らないのだ。

こんなものじゃ嫌だ。こんな無機な物じゃなくて、体温が欲しい。訴える声が、脳内を駆け巡る。
だったら言えば良いじゃないか。あまりにも無責任な言葉が過り、臨也は歯を食い縛った。
そんなのは駄目だ。いくら気持ちよくても、シズちゃんは喧嘩相手。恋人なはずがなければ、セックスフレンドでもない。
つい一昨日の夜中、静雄の拳を避けられてさえいれば、少なくともこの状況に陥ることも無かったろうに。

しかし幾ら後悔してももう遅い。後悔は、後に悔やむしかないのだから。

「こんな玩具でそんなに取り乱すなんて、情報屋の価値も低いモンだな」

「うる、さ…っはあ!あっ、ふあ…!」

「手前がどんなに口先だけで嫌がっても、身体は素直だな…ほら、もう出そうなんだろ…?」

静雄の唇から囁かれた低い声は、腰の奥の疼きを増させ、下肢に震える感覚を与える。力を入れていたものの、腰ははしたなく揺れた。
当たり前だ。静雄に監禁された夜から毎晩こうして体内を玩具に弄ばれているのだから、敏感になってしまう。

――そして臨也は、今日で4回目の絶頂を向かえた。
ぐったりと荒い生地のシーツに身体を埋める。ようやく体内から異物が抜かれ、臨也は安堵に意識を取られながら身体を震わせた。
今日は終わりだ。良かった。ようやく寝られる。
――否、一番の問題は。

「臨也」

臨也の顔の隣に、静雄の腕が置かれる。身構える臨也を、静雄は優しく笑った。ざわり、背筋に何とも例えがたい感覚が押し寄せ、静まりかけていた熱を呼び戻す。
静雄は、先刻までの残酷なほどの態度など忘れたかのように、臨也に囁くのだ。


「好きだ、臨也」


「……黙れ」

自分のものを差し出しもしないで、俺ばかりが屈辱的な思いを味わっているのに、何様のつもりだと言うのだ。
そう言ってやりたい気持ちと、素直に受け止めてしまう自分。その矛盾に歯噛みしながら、臨也は麗かな眠気に身を委ねた。

あれだけ酷いことをした後に、愛してる、と囁く彼。
何のつもりで吐いた言葉か。懺悔?嘲笑?同情?…それとも、愛情?
受け入れてやるものか、と暴れる自分と、受け入れて縋りたくなる自分が、静雄以外干渉しないこの部屋に共存する。
…でも、もしあの言葉が本当なら。無機なものではなく、体温が与えられるなら。
――愛されてみたい、と思った。



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