30万打小説

□憂心ラプソディー
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「もし、シズちゃんにふられたら?」

臨也の反芻した声に、静雄は一瞬躊躇いながらも頷いて見せた。
何気なく頭に浮かんで尋ねた言葉。…否、今まで幾度となく、自分の内に問いかけていた言葉。尋ねた後に、その言葉の重大性に気付いた。
臨也は、ううん、と唸り、それから苦笑を溢す。

「ふられたことないから分からないし、第一考えたくないよ」

「……何で」

振られたらどう思うか。
相手が好きなら、それはショック以外の何者でもないのだろう。好きでなければ、どうでもいいはずだ。確かに、相手が性欲処理にあたるなら、また別かもしれないけれど。

臨也は静雄の問いかけに、不毛だと言いたげな表情を浮かべる。

「何でってさ、言わなきゃ分からない?もう大人なんだから、空気で理解してよ」

「ああ?誰がしてやるか」

いや、確かに理解している自分もいた。でも、自分の思い違いだったら?もし、臨也にとって都合の良いときに会える適当な相手だったら?言うことを聞いてくれる性欲処理の道具だったら?
そう思わせるに至ったのは、臨也、お前のせいだ。お前が、無闇に俺なんかに絡んだから。告白なんてしたから。
臨也は、静雄を睨みつつも俯いた。黒い髪が白い肌を隠す。

「だから…嬉しいなんて、思う?俺からもちかけたのに?嫌いだったら、とっくに振ってるし…」

呟くように紡がれた声は、耳を通りその奥まで染み渡る。とくん、と胸が優しく震えた。
――ああ、もしかしたら、自分は下らない悩みを抱えていたのかもしれない。
途端に調子を取り戻す自分も、中々子供だ。子供だが、悪い気はしない。

「じゃあ、言え」

「は?」

「好きって言えよ。常々、手前の最初の告白が気に入らなかったんだよ」

頬を両手で挟んで、視線を重ねる。滑らかな肌にふわりと赤みが差した。

「なにそれ。じゃあシズちゃんから先に言ってよ」

意地を張るようにつり上がった眉。それすらも愛らしいものに思えてしまう自分は、相当臨也に入れ込んでいるのだろう。

「手前こそ、空気を読めよ」

「読めない人に言われる筋合いはない」

低く言った臨也は、恥ずかしさを紛らすように視線を泳がせる。
しかし、その視線を仕留めるように、静雄は臨也へ唇を重ねた。


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