30万打小説

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…それでも地道に通う自分は、きっと誰よりも女々しい。もう来なければ、こんなに辛くないのに。でも、甘えたかった。
ここに来はじめて、もう一週間が経つ。早いものだ。その間に、どれだけ精神が不安定になったか。

臨也は玄関に付くと、扉を引っ掻いた。何時もと変わらない音が、夜の空気に冴え渡る。
直に扉が開き、臨也は静雄に飛び付いた。
――しかし。


「なっ…臨也!?」


臨也は思わず跳ね上がって、静雄を突き飛ばすように離れた。
状況が理解できなかった。少なくとも、静雄は臨也が臨也であることに気がついている。猫ではない、ということに。

「手前…どういうことだ?」

臨也は何も言えず、黙り込む。喧嘩相手に抱きついた。それをどう誤魔化せと言うのだ。
静雄は、臨也を見つめたまま、ぽつりと口を開いた。

「まさか、今までの猫…」

その言葉に、臨也は思わず息を止めた。

***

丁度一週間前。
何時ものように風呂から上がり、冷蔵庫で冷やされた牛乳を飲む。ほう、と息を吐き幾らか経った頃、頭がぼんやりとしてきた。

「疲れてるのか…?」

大人しく寝るか、と呟き、静雄は布団に入った。

…その日から、不思議な夢が始まった。
夜中に綺麗な毛並みの黒猫が訪ねてくるという、何処かメルヘンチックな夢が。
しかし時には、夜は布団に入ったはずなのに床で寝ていたりすることもあった。寝惚けて猫の夢でも見て、あほみたく歩き回ったのだろうか。初めの数日は、そう思っていた。

しかしそれから5日。自分の腕に引っ掻き傷があることに気がついた。
いくら猫の夢を見ているからと、引っ掻き傷なんかつかないだろう。
…ということは、本当に猫が訪れているのだろうか。
静雄は誰かに話そうか迷い――止めた。誰も信じてはくれない。確かめるなら、自分でしか不可能だ。
そんな中、原因を突き止めるため記憶を巻き戻すと、あることに気がついた。
毎日、牛乳を飲んで数分後に頭がぼんやりとしだすのだ。一週間前以前は、こんなこと無かったのに。
どうしようか迷った挙句、7日目、静雄は牛乳を飲まなかった。

そして夜中インターホンに起こされ、出てみれば突然臨也が飛び付いてきたのだ。

***
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