30万打小説

□Trouble Travel
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自由行動も終わり、一日の日程も終了した。そして今日、いつもの4人で泊まる部屋に行けば。

「…は?」

「だから、臨也と静雄が二人部屋なんだってよ」

門田の説明に、臨也は目を丸くした。
彼曰く、今日泊まる旅館側の手違いで偶然にも臨也たちの泊まる部屋に客を入れてしまったらしい。
しかしちょうど二人部屋が二つ空いており、そこで臨也と静雄が同じ部屋だと教師から指示を受けたのだ。

「先公に言って、臨也と静雄を同じ部屋にしないようには出来るけど…」

「いっ、いいよ別に。シズちゃんとも喧嘩しないようにうまくやるから…っ、俺シズちゃんより大人だしね!」

「そうか?本当に大丈夫なんだな?」

大丈夫に決まってるだろ、と臨也はせせら笑って見せ、そそくさと部屋に向かった。でないと、勝手に綻ぶ頬を見られてしまいそうだったから。

予想外だ。まさか偶然にも、こんなことが起こるなんて。
…否、もしかしたら必然だったのかもしれない――なんて。

「それは流石に都合良すぎか…」

呟いて襖を開ければ、既に部屋に着いて荷物を整理していた静雄が此方を見た。しかしその視線は直ぐに逸らされ、臨也も何をすることもないまま離れた場所に荷物を置くと整理を始めた。
気まずい沈黙ではあるが――少なくとも、拒絶ではないのだろう。喧嘩ばかりしているのに意外だ。

「手前、俺と同じ部屋で良いのか?」

不意に静雄に問われ、鼓動が跳ね上がった。荷物を整理する手を休めることもせずに言うものだから、自分だけが動揺している気がして腹立たしい。しかも、彼の声は普段聞かない落ち着いた声で。
けれど、その問い掛けに挑発紛いな返答をすれば元の木阿弥だろう。喉元まで出かかった言葉を飲み込み、臨也も極力静かに返した。

「いるんだから、そうに決まってるだろ」

「…ふぅん。何で?」

「…何でも。」

どき、どき、胸が煩い。
会話はそこで終わったというのに、鼓動はいつまで経っても騒がしいままだった。


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