30万打小説

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いつもの、静雄の家でのデート。
切欠は、ちょっとした嫉妬。

「良いだろ別に、手前以外と変なことしてるわけじゃ無いんだし!」

「どうだか!信じられないよ、だってシズちゃん、女には優しいだろ?やっぱり女が良かったってこと?」

「誰がそんなこと」

「二股かけてても有り得なくなくないよねぇ?」

分かっていた。分かっていたんだ。彼はそんなことをするような酷い奴じゃないってことなど。
でも、嫉妬せざるをえないじゃないか。試したくなるじゃないか。彼が女と話していたら。それが一瞬でも、お似合いだと思ってしまったら。

「手前、そんなに別れてぇってのか?」

「え…」


「手前なんか、付き合わなきゃ良かった」


あまりに唐突に突きつけられた終焉。
頭の中の線がぶつんと音を立てて千切れた気がした。
その場に耐えられるはずもなく、じゃあ勝手にしてよ、と叫んで家を飛び出した。
置き忘れたジャケットを取りに戻ることも出来ないまま、臨也は走る。

――きっとシズちゃんには、俺なんかより大切にするべき人間がいる。
だから、こんな人でなしの俺なんかを好きでいるべきではないのだ。綺麗な顔立ちをしているし、根は優しい。それに、何度あの笑顔に癒されてきたことか。
そんな存在の彼を、俺の元に置いておくわけには、いかない――


***

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