30万打小説

□交戦奇想曲
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「静雄、何しに来たの?」

次の日、静雄は新羅の家に訪れていた。
理由は他でもない。

「…臨也、知らねぇか?」

「臨也?来てないけど…、また何かされたのかい?」

「いや…ならいい。ごめんな」

そう返して、静雄は新羅の家を出た。

臨也が、昨日から行方不明。
と言うのも、やはり昨日殴ってしまったのが気になり、臨也の家に言ってみたが彼の秘書曰く昨日仕事をほっぽって人間観察に出ていったきり戻ってないのだと言う。
それならと新羅の家に来てみたものの、此処にも来ていない。
新羅経由で知っていただけで未だかつて掛けたことのなかった電話もしてみたけれど、結局臨也は出なかった。
何処に行ったんだ。あの状態で遠くに行けるとも思えない。

…兎にも角にも、静雄は街を歩くことにした。平然と歩く臨也を期待して。


しかしその数時間後、静雄は肩を落としていた。
いない。いない。臨也がいない。どこにもいない。いない。
…俺が怪我を負わせたから、嫌気がさしたのだろうか?否、そうだったらとっくの昔に何処かに消えている。
じゃあ何処にいると言うのだ。自宅にもいない、新羅の家にもいない、池袋にもいない。連絡もつかない。

静雄は喧騒を抜けると、近場の廃工場へ来た。以前はカラーギャングの住処だったらしいが、それも幾らも前だ。今は人など殆ど見られない。
その静けさに胸を落ち着けるために来てみたのだが、相変わらず胸は苦しく高鳴るだけで。
再び電話をかけてみよう。もしかしたら自分の電話だから出ないつもりかもしれないけれど――
アドレス帳から臨也の名前を探し、発信ボタンを押し、耳に当てた時だった。

微かに、ほんの微かに。
風に乗って、着信音が聞こえてきた。
気のせいだろうか、と思うも、携帯を離して耳をすませば、確かにそれは幻聴ではないことが分かった。
この工場跡に臨也がいるのだろうか。静雄は黒い姿を探して音の方へ歩き出した。

そして、以前は資材倉庫だったのか木片が転がる場所へ来た時、男が二人、入り口で地面にしゃがみこんでいるのを見つけた。
遠巻きに様子を窺っていれば。

「これ、誰のだ?さっきからうるせぇ」

「平和島静雄…?って、…あいつだよな?馬鹿みてぇな力の…」

不意に聞こえてきた会話に、そこに携帯があることを知る。
…そして、静雄の着信を伝えているという事実が、臨也が確かにここにいたことを教えていた。
胸が煩い。静雄は更に耳をすましてその会話を聞いた。

「まさかこれ、情報屋のじゃねぇか?」

「落としていきやがったのかあいつ…
まぁ、こんなところに誰が来るはずもねぇだろ。もってくぞ」

そう言って二人は、その資材倉庫へ入っていく。
静雄は決意すると携帯を仕舞い、倉庫へ向かい走り出した。
…確かにそこにいるであろう、臨也を見つけるために。

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