30万打小説
□Peaceful Days
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「ごちそうさま」
あの後気がつけば眠っており、八時頃に再びサイケに起こされてリビングに来た。
津軽とサイケの作った朝食を食べ終わり今日はどうしようかと思案していれば、サイケが目を輝かせて臨也に歩み寄ってくる。
「いざやくん、あそぼーっ」
「んー…何して?」
「うーんと、おままごととか、とらんぷとか、ちゅうするとか」
聞き慣れない遊び…と言うより、遊びに思えない言葉に、臨也は思わず首を傾げる。キッチンで皿洗いまでしている津軽が、こちらをバッと見た。
「…ちゅうする?」
「うん、さいけが、ほっぺにちゅうさいけもしたいってつがるにいったら、つがるがさいけのおくち」
「サイケ!皿洗い手伝え!」
「はぁい、いざやくんあとであそんでねー!」
…ああ。そう言うことか。
津軽の顔が真っ赤なのが笑える。サイケの無邪気さは自分の顔を抜いて可愛いとは思うが、時にそれが武器になるあたりが恐ろしい。
…まぁとにかく、少しは時間が出来た。
外に出るには短いが、何もしないのは惜しい。
デリックと日々也の部屋を見に行けば日々也は壁にもたれたデリックの膝で丸くなっていた。デリックの口が動いていない辺り、二人で眠っているのだろう。
そんな光景に安堵していれば。
――不意にチャイムが鳴った。誰だろうと見に行けば。
「…本物か」
「何だよその本物って」
バーテン服にサングラス。本物の静雄の姿に、臨也は思わず呟く。笑って、何でもないよ、と言えば訝しげな目をしながらも、静雄はここに来た本題を話した。
「どっか遊びに行くか」
「…本当?」
「嘘じゃねぇよ、なんで嘘吐くためにここまで来なきゃなんねぇんだ。
本物だとか本当だとか、手前は俺を何だと思っていやがる」
いや、だって…、小さく呟いて、臨也は赤らんだ頬を気にしながらも微笑んだ。
シズちゃんが最近忙しかったから、久しぶりに遊べるなぁ、って。そう言えば、静雄は困った顔をしながらがしがしと頭を掻く。
――好きだよ。シズちゃんが、一番。
津軽みたいなよりも、デリックみたいなよりも、どれよりも愛しい。
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