30万打小説

□歪なポルカが奏でる
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…相変わらず、ドタチンは鋭い。
流石だな、と呑気に思いながら、臨也は送信ボタンを押した。
『シズちゃん、仕事の合間にわざわざご苦労様。』
嫌味に近い言葉。当然、臨也もそのつもりで送っている。
三分後、静雄からメールが返ってきた。

『臨也が来なきゃ良い話だろうが。手前を見かけたら追いかける癖が出来てるんだよ、悪いか。別に手前を追いかけるのも嫌いじゃねえし』

その言葉に、臨也はくすりと笑う。静雄が声に出して言う姿を想像して、こそばゆい気持ちになった。
静雄とメールするのは好きだ。普段唇から紡がれることのない言葉が並ぶ。
それがこそばゆくて暖かくて好き。

『癖って、本当に駄目だよね。
まぁ、俺も嫌いじゃないよ、シズちゃんと喧嘩するの。
たまにはちゃんと喋ってみたいなーとか思うけどさ。』

『それは無理だな』

即答かよ、そう思いながら、臨也は携帯を握り締める。
声が聞きたい。喋りたい。微笑いたい。

『シズちゃん
会いたい』

臨也の唐突な返信に、静雄からは予想通り、何をいきなり、と返された。
何だって良いだろ、そう送れば、数分置いて返事が返ってくる。

『時間がないから無理だ。ごめんな』

『わかった。別にシズちゃん困らせたかっただけだし』

『ごめん』

ふぅ、と溜め息を吐いて、それから携帯を閉じた。
普段会って話すときは専ら喧嘩腰なくせに、画面越しの会話は不思議なくらいに成立する。
彼らしいと言えば彼らしい。

「会いたかったなぁ」

まぁ、彼方にも仕事があるわけだ。こちらがわがままを言い過ぎるのも鬱陶しいに決まっている。
きっと何だかんだ、駄々を捏ねれば彼はいくら遅くなっても来てくれるのだろう。でも別に、そこまで困らせたいわけじゃない。

――と、返信のしていなかった携帯が手中で震えた。今度は誰だ、と開くも、また静雄で。
返信しなかったから怒ったとか?そんなことを考えながら、少しばかり緊張して携帯を開けば。

『俺だって臨也に会いたいんだ』

――ああ、こんなの不意打ちだ。
知ってるよ、そう一言、電波に乗せた。


喧嘩と友達以上恋人未満。そんな歪な状態を続けることに嫌悪はないが、結局何なのだろうか。終着点が見当たらない。
恋人だか友人だか喧嘩相手だか、何れかの関係に固定されれば考えることもなかろうに。
終着出来るならしてみたい。俺とシズちゃんは、どこに行き着くのか。




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