30万打小説

□歪なポルカが奏でる
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「また手前の仕業だろうが!!」

「勘違いも甚だしいよ、鬱陶しいな!」

池袋の街には、今日も怒声が谺する。
耳の痛くなるような声に怯える人、好奇心混じりに目を向ける人、無関心を装って視線を逸らす人。
様々な人間がいれば、それぞれの反応があるが――臨也は、どの反応にも属していない。
静雄は犬猿の仲であり、臨也にとっては恐怖を抱く対象ではない。況して、今更その人間離れした身体能力に興味などわくはずもない。
――湧く感情はそれだけかと問われれば、そうでは無いのだけれど。


臨也は静雄をようやく撒くと、疲れの息を吐き出し、それからニヤリと笑う。
――静雄の言う通り、今回の仕掛人も自分だ。ヤクザの幹部の彼女を上手く言いくるめてくすね、それを静雄へ向かせる。
勿論たぶらかしたのは静雄だと思われ、プロの暴力集団に追い回されたらしい。

対抗しうるだけの力が無いのなら、頭で戦うのは当たり前。
臨也は得意気に笑って、それから携帯を出した。メール画面にすると、送り慣れたアドレスへメールを打ちだす。
――こんな関係になったのはいつからだったか。既に受送信フォルダには初めに交わしたメールなど許容を超えて残っていないため、今更確認のしようがないけれど。


「臨也」

不意に後ろから呼ばれた声に、歩きながら画面を見ていた臨也は振り返る。見慣れた姿に、臨也は自然に笑顔になった。

「ドタチン、久しぶりだね」

「だな。…つうか、携帯見ながら歩くとあぶねぇぞ」

「大丈夫、人にぶつかったりとかそんなヘマはしないよ」

カラカラと笑って言った臨也を呆れたように笑って、それから画面を覗き込む。大したものでもないか、と思い隠すこともしないでいれば、門田は不思議そうな顔で口を開く。

「いつも喧嘩してるくせに、メールだけはするよな、臨也と静雄は」

「――まぁね」

「どんなこと話すんだよ。まさかメールでも喧嘩してるんじゃないだろうな」

門田の言葉に臨也は僅かに間を置き、それから唇に人差し指を添えると目を細めて笑った。

「んー…秘密」

意味もなく意味深に言って見せれば、門田は一瞬複雑な表情を浮かべたものの、それから伸ばした腕で臨也を撫でる。
喧嘩はするなよ、と苦笑する門田に曖昧に返事をして、それから別れた。



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