30万打小説

□愛慾淘汰
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ほんのちょっとした好奇心。
付き合っている彼が、いつも情事ではリードする彼が、
もし快楽を強く感じるようになったなら?



臨也は静雄と付き合っている。
他人にはまるで信じられないことであろうが、勿論事実。
今現在静雄の家にこうして泊まりに来ていることが何よりの証拠だろう。
臨也は静雄が風呂から出てくるのを待ちながら――昨日手に入れた薬をポケットから出した。
お茶を出し、それをそこに入れて混ぜれば、粒子状の薬は跡形もなくお茶に溶ける。

「…よし」

小さく呟けば、タイミングを計ったかのように脱衣室から静雄が出てきた。
臨也は急いで薬の容器をポケットに戻すと、リビングへ入ってきた静雄に自然に笑いかける。

「これ、飲みきれなかったから飲んで良いよ。俺は風呂入ってくるから」

「ん、ああ」

そそくさと、しかし悟られないようにリビングを出て、臨也は風呂場へ向かった。
緊張に高鳴る胸を悟られなかったことに安堵しながら、臨也はやっと頬を緩める。

――ほんの好奇心。
今日もきっと、この後情事に陥ることを想定しての。

…昨日、新羅から媚薬をもらった。
どうしてそんなものを持っていたかは訊かなかったが、半分は首なしライダーこと新羅の最愛のセルティ絡みな気がする。
今更どうとも思わないが、変わった奴だ。数少ない旧知の仲だし自分に損になるばかりでも無いから、今でも友人でいるわけだけれど。

普段は臨也を不敵に笑いながら詰る静雄。別にその態度も嫌いじゃないし、静雄とのセックスは好きだ。
でも、静雄だけが快楽に弱くなれば、彼はリードを許すのだろうか?俺がいつも感じるような羞恥を感じてくれるだろうか?
別に彼をリードしてみたい訳ではないが、一応にも自分も男だ。いつも彼に全てを明け渡して満足するのも如何なものか。

風呂上がりにはもう効果が出ているであろう彼を想像しながら、臨也はほくそ笑んだ。



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