2nd

□ダンデライオン
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「これ、臨也っぽくない?」

不意な新羅の声に、静雄はその手元に目を向けた。
買い物に来ていたショッピングセンターで新羅に会い、明日はセルティと初めて会った記念日なのだと散々語られた挙げ句、プレゼント選びに付き合わされているのである。
静雄としてもセルティは慕っているものだから構わないが、二人の…というよりもきっと新羅が勝手に作ったのだろう記念日に巻き込まれるのは正直気に食わない。
そうして雑貨屋に連れ回されている中、唐突に新羅がそう言ったのだ。

「あ?」

新羅の手に取られていたのは、黄金色の石が小さな花を象ったネックレス。形を見るに、タンポポだろう。
確かに、という肯定の声を隠して、何言ってんだ、と唸るも、新羅は妙に晴々しい笑顔で続ける。

「まぁ俺は臨也のこと、見た目は兎も角中身はこんな綺麗じゃないと思ってるけどね、もっとおどろおどろしいものの方が似合ってる」

「だったら何で臨也らしいなんて言ったんだよ」

思わずそう返せば、新羅は静雄を嫌にいい笑顔で見やると、楽しそうに口を開いた。

「静雄の中の臨也ってこんな感じだろ?」

否定の出来ない言葉に、静雄は小さく息を飲む。確かについ昨日、そんなことを思ったから。
誤魔化すように反論しようとするも、逆にわざとらしいくらいに声が上擦ってしまった。

「っ…誰がそんなこと言った」

「図星かい?バレバレなんだから今更誤魔化そうなんてしない方がいいよ?」

その物言いに腹を立てて新羅の顔を睨み見れば、怖いよ、と額に汗を浮かばせた新羅が背後にいた子供に目配せするものだから、思わず顔の筋肉を緩める。
そんな静雄にほうと息を吐いた新羅は、それから自慢げに笑った。

「高校から二人とずっと一緒にいた俺をなめないでほしいな。
ていうか、気づいてないのは当事者の君たちだけだよ。門田君も気づいてるしね」

「なっ…」

勝手に顔が熱くなって、静雄は自分がどれほど感情が顔に出やすいかを改めて思い知る。
新羅を再び睨めば、やっぱりね、と至極楽しそうに言われるものだから、静雄は睨むこともままならなくなって黄色の花を見つめた。



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