リクエスト

□Necessity
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…その優しさに甘えてるの、知ってる?
中途半端に優しいから、嫌いになれないの、解ってる?
きっと、解ってないんだろうね、鈍感だから。
胸が苦しくて息が詰まるくらい、俺がシズちゃんを好きなことも、知らないんだろう。
それでもいいよ、諦められるまで、片想いを、楽しむから…



僅かな息苦しさに、臨也は重たい瞼を開いた。
その視界の薄暗さに、夕方にでもなっているのかと起き上がろうとして、
状況に気付いた。

視界が眩むほど近くに、静雄の顔。
いつも静雄から香る紫煙の残り香。
柔らかく温かい、感触。

「シ…!?」

驚いて上げた声は、二人の口内に籠って響いた。

途端に静雄の顔が上がり、互いに、信じられない、と言いたげな眼がぶつかった。
臨也は状況を掴めず、焦ったままの震えた声をどうにか紡ぎ出す。

「な…なに、どうしたの、ねぇ…」

静雄から返事はない。
焦燥を湛えた表情は俯き、否応なしに沈黙を作り出す。
打開のしようが無い状況に困惑しながら、臨也が再び尋ねようと口を開く。

…その時だった。


肩を強い力で押されて、腰掛けたままのソファに強く押し付けられる。
息を詰めた臨也は、肩へ走る痛みに呻き、抵抗に口を開こうとした。
…しかし、その唇は静雄に奪われる。

「んっ…やめ…ぁ…ふ…」

反論に口を開けば、口内に舌が入り込む。
逃げなければ、そう本能のように感じ首を振るも、肩を押す手が両頬を包み、逃げられなくなる。
敵わないと知りながらも、必死に静雄の胸板を叩いた。

「ん…はぅ……っは…ぁ…」

何なんだ、これ。

背骨の奥が、ぐずぐずと熱い。
予想に反したほどの濃厚なキスは、臨也の腰を頼りないものに変える。
胸板を叩いていた手は、いつの間にか静雄のシャツを握りしめていた。

どさり。
身体が、床にゆっくりと倒される。
唇を離した静雄の顔は赤く染まって、感情を閉じ込めたような苦しげな表情で臨也を上から見詰めた。
逆らえない。
突きつけられた現実は、まるで白昼夢のように現実味が無い。


…そのまま、雪崩れ込むように、身体を重ねた。



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