リクエスト

□仲合ファイター
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「おいひい」

他人からすれば可愛らしいのだが、迷惑を被った静雄にとっては火に油を注ぐようなもの。
何で怒ってるのさ、とわざとらしく聞いた臨也へ、静雄は大人気ないほどに怒鳴り付ける。

「テメエが遠慮もせずに食ったからだろ!!」

「それは言いがかりだよ、シズちゃんたら」

飲み込んだ臨也は、唇を尖らせて言う。

「あげる、って言って、これだけ、って決めなかったのはシズちゃんだよ?
だったら、もらう人の自由じゃない?」

臨也の憎たらしい台詞に、静雄の回りの空気が殺気を帯びて禍々しくなる。

また始まった、と言いたげな門田の視線を感じ、
臨也は面白半分に門田に寄りかかり、その背中に隠れた。
…ピクリ、と静雄の眉が上がる。

「…臨也、離れろよ」

明らかに危ない静雄の空気に呆れながら門田が言うも、
門田の柔らかい宥め方に臨也が引くはずもなく、「やだ」と即答する。

「いいじゃん、シズちゃんには関係無いだろ、俺がドタチンにくっつこうと何だろうと」

わざと静雄の神経を逆撫でするように毒づいた臨也は、
後ろから門田の首に腕を絡めた。
ぴく、と更に静雄の眉が上がる。

静雄の苛立ちを露にした反応を臨也は楽しんでいるらしい。
門田の背中に身体を預け、肩の上から顔を出すと、ニヤリと笑って。

「たとえ、俺がドタチンにキスしてもさ」

臨也はそう言うと、
躊躇うことなく門田の頬に唇をくっつけた。
ちゅ、と可愛い音がして、驚いたように僅かに門田の頬が赤くなる。

再びキスをしようとする臨也を、危険を察知した門田が止めさせようとする。

…が、それを止めたのは門田ではなかった。


「…なに、シズちゃん」

静雄に腕を掴まれ、臨也は見上げながら、思わず問い掛ける。

そう、臨也の唐突な行為を止めたのは、静雄だった。
まさか、行動を止めさせるために、腕を掴むだけだとは思いもしなかった。
いつもの静雄なら、門田も巻き込む勢いで殴りかかってきそうなのに。


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