リクエスト

□色恋ドロップ
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臨也と静雄は、誰もが認める犬猿の仲だ。
互いに姿を見れば喧嘩を吹っ掛けるし、一歩間違えば死人すら出かねない。
平和島静雄は人知を越えた怪力保持者。折原臨也は裏社会で名の立つ情報屋。
明らかに裏の人間でありながら、堅気すらその名を知っている者だっている。

…ただ、その『裏』を知るかどうかは、別として。



臨也は、頭のすぐ横に置かれた静雄の骨張った手に落ち着かないままに、身体を沈ませるシーツを握りしめる。
自分の僅か数十センチ上にある、いつもより緊張した静雄の顔を、同じように緊張する臨也は躊躇いながら見詰めた。

恋人、という関係に落ちたのは、さして昔ではない。
他人にどう見えどそれは二人にとって喧嘩であり、不器用なりに結ばれて今の関係に至る。

…しかし、お互いに今までに誰とも身体の関係を持ったことは無くて。


「本当にいいのか?」

「シズちゃんが押し倒したくせに何を今更…」

静雄の緊張が此方にまで伝わってきて、必死で動揺を隠そうとしているのに、声が震える。
勿論、静雄にとってもこの状態は空きっ腹に据え膳なのだが、
今までに行為に及んだことがなく、どうするのが一番良いのか分からない。
初っぱなから、え、なんて声を上げられようものなら、自分は逃げ出してしまうだろう。

そんなことを悶々と考える静雄。
何となく考えていることが分かり、気恥ずかしくなりながらも、シーツを握りしめていた指を静雄のシャツに絡ませた。
その指は、やっぱり少し震えて。

「…シズちゃんの好きにしてよ」

どうにか言えば、静雄は一度目を丸くして、その顔を気の抜けたように緩ませ、
シャツを握るか細い手指を上から握ると、どうなっても知らねぇぞ、と、囁いた。


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