リクエスト
□休戦時間
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「ねぇドタチン、玉子焼きちょうだい」
「1つか?」
「ううん、2つ」
臨也がそう言いながら口を開くと、門田は慣れたように臨也の口に玉子焼きを放り込む。
美味しそうに口をもぐもぐと動かす臨也を、静雄は焼きそばパンを頬張りながら怪訝そうな目で見やった。
「手前、弁当くらい自分で用意しろよ」
僅かに苛立った静雄の声に、臨也は澄まして、「やだ」と即答する。
折角の休戦時間にまで喧嘩を勃発させようとする2人を宥めるように、門田が割って入った。
「俺が用意しねぇと飯食わねぇかもしれないから、気にするな、静雄」
「……」
無言になって眉根を寄せた静雄など気にする事も無く、
臨也は「もういっこ」と門田に当然の如く催促し、門田も同じように再び玉子焼きをその口へ入れる。
これも頂戴、あれも頂戴、と臨也が口を開ける度に、静雄の顔が険しくなる。
「静雄、ご飯の時間くらい喧嘩しないでよ、セルティの愛情が詰まったお弁当が静雄の苛々で台無しにな」
「るせぇ」
新羅のセルティ愛の主張を静雄の苛立ちに満ちた声が遮る。
その、まるで威嚇するみたいな声で、静雄は臨也を睨みながら口を開いた。
「臨也くんよぉ…手前は赤ん坊じゃねぇんだから、昼飯くらい自分で買えるよな?」
明らかに黒いオーラを漂わせた静雄を、臨也はチラリと横目に見たのみ。
ふん、と偉そうに鼻を鳴らして門田へ向き直り、更に静雄の怒りを煽る。
「ドタチンのお弁当より不味いご飯なんか食べる気にもならないよ」
そんな臨也に苦笑した門田と新羅。
――しかし、危険なオーラを感じ静雄を見て…ブチ、という音を聞いた気がした。
静雄の手元にあった焼きそばパンの空袋が引き千切られ、それは明確になる。
「いい加減にしろ!手前のせいで気分悪ィだろ!」
「ちょっと、俺には関係ないでしょ、シズちゃんの言いがかりじゃないか」
臨也は憤る静雄をせせら笑って、弁当箱の中の最後の1個だった玉子焼きを指でつまみ上げ口へ運んだ。
その行動に静雄の背負う空気が更に禍々しくなる。
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