リクエスト
□休戦時間
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臨也の1日は喧嘩から始まる。
「待ちやがれ、ノミ蟲!!」
怒りを露にした奴の声が耳に痛いくらいに響く。
廊下を疾走しながら、そいつを振り返りもせず、寧ろその怒りを増長でもさせるかのように挑発の声をあげた。
「今止まったらシズちゃんに殺されるだろ?
それなら戦争地域に行って殺される方がマシだよ」
「じゃあ死ね!」
「残念だけど俺は死ぬのは怖いから遠慮するよ!」
意味も無く言い争いながら、静雄に投げられた机を軽いフットワークで避け、
次に投げられるであろう掃除用具入れを静雄が掴んだ隙を見逃さず、臨也は手に持つナイフを静雄の背に横薙ぎに振るった。
しかし静雄も瞬時に気付き、床を強く蹴って臨也のナイフの軌道から逸れる。
僅かにシャツを掠めたナイフは、白を切り裂き、その下の赤を僅かに滲ませた。
間合いを取った2人は肩を弾ませながら互いを睨み合う。
「切ったんだから、少しくらい痛がって欲しいな」
「こっちは最近買ったばっかのシャツ切られて気分悪いんだよ」
「着てくるシズちゃんが悪いんだよ」
互いに自己中な台詞を吐きながら、更に鋭く眼光を放った。
2人の仲の悪さは、学校でも有名だ。
その喧嘩を止められる人間なんか、この2人すら含めて皆無に等しい。
――そう、1つあるとしたら。
「静雄、臨也、昼飯だから屋上来いよ」
門田の声とチャイムの音に、2人の動きがピタリと止まった。
腹が減っては戦は出来ぬ。
それを顕著に表すかのように、傷だらけの2人はそれまでの喧嘩など無かったかのように無言で屋上へ歩き出した。
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