リクエスト

□甘色メランコリー
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地球すら焼きつくしてしまいそうな赤。
見詰め続ければ、頭すら痛くなるような眩しい光を目に焼き付けながら、
臨也は、夕日を背に佇む男に語りかけた。


「シズちゃん」

「…あ?」

眉を顰めた静雄。
臨也は背の低いフェンスに凭れ掛かり、静雄を見やった。
静雄は、何を突然言いだすのかと臨也を睨む。

「もし、俺が突然死んだら、どう思う?」

予想すらしなかった言葉に、静雄は一瞬目を丸くした。
しかし直ぐに不敵な笑みを浮かべて、挑発するように言う。

「嬉しいに決まってんだろ?」

『俺もシズちゃんに死んで欲しいけどね』
…そんな言葉が返ってくると思っていた。なのに。

「あははっ…当たり前だよね」

静雄の期待を裏切って臨也はそう言い、フェンスの手すりに座った。
金網だけのフェンスは、カシャン、と冷えた音を響かせ、細身の臨也すらも危なっかしく揺らす。
僅かに浮いた臨也の足は頼りなく揺れて、風が吹くだけで胸が高鳴った。

何時もと違う。

静雄はそう感じ臨也を凝視する。
それに気がついて臨也の視線が静雄の視線と重なった。しかし、それを臨也は不自然に逸らす。
そして口角を吊り上げると、口を開いた。

「今日は、シズちゃんに朗報があるんだよ」

そう言った臨也は、金属の擦れる音を響かせ、フェンスの手摺に立ち上がった。
足と手摺の接触面積はたった数十平方センチメートル。
突然の危険を伴う行為に、静雄が止めるように一歩踏み出す。

…まるで、それを見計らうかのように臨也は言った。
臨也にしては真剣すぎるくらいの、冗談めかした声で。



「俺からシズちゃんへの、
最初で最後のプレゼントだよ」


ゆらり。
臨也の身体が揺れた。
赤い空に、身体が吸い込まれていく。
見上げる必要すら無いほど、空は眼前に広がった。





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