リクエスト

□君色依存
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その夜。
自宅の隣の建物でパーティーが行われていた。
そういえば、パーティーに来い、って言われてたっけ、
そう思いながらも臨也は、静雄の言葉が引っ掛かって拭えないまま、自室でベッドへ突っ伏していた。

…と、不意にノック音が部屋に響く。
誰だよ、と毒づきたくなりながら、「誰」と投げ掛けると、
「平和島ですが」と、声が返ってきた。
どうしてこんな、悩んでいるときに来るんだ、そう言ってやりたくなりながら、臨也は平然を装って「入れば?」と返す。
部屋に入ってきた静雄は、やはりパーティー用のスーツを持っていて。

「パーティー、行けって言っただろ」

眉を顰めながら言われて、臨也はベッドの上で上半身を起こしただけで「やだ」と即答した。

父親の言う事は聞いて、俺の言う事は1つも聞かないシズちゃん。
敬語を遣うよりも、主人に何か注意される方がいいシズちゃん。



「ねぇ、キスしてよ」


臨也の突然の台詞に、静雄は自分の耳を疑った。
数秒の無言の時間を挟み――

「…ふざけてるのか」

静雄の言葉は、想像通りに冷たいものだった。
やっぱり。これでいい。
なのに、胸が縛られるように痛んだ。
期待をしたわけじゃない。試したわけじゃない。
ただ、どうしたら、この馬鹿らしい片想いが断ち切れるのか、知りたくて。

「ねぇ、シズちゃん、
俺の前から消えてよ、嫌いなんでしょ、ねぇ。
父さんに言われたから、だから俺のところにも来るだけなんでしょ?
なら、そんなの無視していいから、俺の前に現れないでよ」

何を何処まで言えば、嫌いになる?
何を何処まで言われれば、嫌いになれる?


「…嫌いじゃねぇよ」


静雄は、気まずそうにそう呟く。
臨也は、信じられない気持ちで静雄を見た。
嘘ばっかり。
嫌いじゃないなら、どうしてあんな態度をとるんだ。



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