リクエスト

□君色依存
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ばたん、と、静雄は扉を閉めて部屋を出て行った。
残された臨也は、せき止まっていた呼吸を解すように大きく息を吐く。
そして、ろくな話が出来なかった、と溜め息を吐いた。


臨也は、静雄が好きだ。
彼が執事だろうが、自分が主人の子供だろうが、そんな身分は関係なく。

そう、最初のうちは、普通の仲だった。
寧ろ、同年代だから直ぐに馴染んで、仲が良かったくらいで。
だから、沢山喋りたくて、もっと仲良くなりたくて、
まるで懐いた仔猫のように、いつも静雄に付いて歩いていた。
…なのに、突然。

『鬱陶しい、来るな』

そう、跳ね除けられた。
あまりにも衝撃的で、吃驚して、泣きそうになって、
理由を問い詰めることも怖くて、『シズちゃんに嫌がらせしたくて付きまとってたんだから』と吐き捨てて逃げた。
その後に、これが恋心からなるものだ、と知った。

…それからずっと、シズちゃんは冷たい。

「何か嫌われるようなことしたのかな…」

呟いてみても、何が解決すると言うわけでもなく、本日3度目の溜め息が零れた。


…ふと、先刻の会話を思い出す。
敬語を遣え、という言葉の返答。

『じゃあ、旦那様に言えば良いだろ』

態度も、ひとつひとつに対する姿勢も、父親に忠実なのは間違いない。
なら、どうして、告げ口されてもいい、と言うのだろう。

「告げ口されるよりも、俺に敬語遣う方が嫌、ってこと?」

呟いたら、泣きたくなった。
勿論、今ここで答えが返って来ることはない。
でも、思い浮かぶ答えは幾ら絞り出そうと切なくなるものばかりで、堪えきれずに思考を遮断した。





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