リクエスト

□陶酔境
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臨也は、重たい腰で静雄の家を出る。
腰に響く鈍痛に、それを引き起こした奴と身体を重ねていた事を確認しながら。



臨也は、静雄が好きだ。
いつからか身体の関係を持って、今日に至る。
…勿論、臨也は静雄へ、他の人間に向ける愛とは違う愛を重ねていた。
だからと言って、素直になるには自分のプライドは高すぎて、
身体の関係だけを持ち、宙ぶらりんのまま、今の二人に至る。

静雄が如何思っているのかも分からない。だから、余計にどうしようもない。
好き。
そんな単純で明快な二文字は、何よりも複雑で暗鬱な二文字になる。

どんなに身体を重ねても、心なんてそこには無いのかもしれない。
いつかは身体の関係すら消えうせて、ただいがみ合うだけになるかもしれない。
いつまで片想いなんだろう。
いつまで片想いできるんだろう。
そんな堂々巡りな言葉は遮断すら許されず、
そして今日も、喧嘩と愛撫を重ねては、痛みに苛まれた。




腰に昨日の痛みを残したままに、臨也は静雄に誘われて、家に行った。
それは最早日常で、躊躇いも何も存在すらしていない。

「…また今日も、セックスしたいの?」

臨也は呆れたように尋ねた。
…滑稽だ。
身体だけの関係が辛いのに、そんなことを訊くなんて。

「そんなこと言ってる手前がしたいんだろ?」

静雄は片頬を吊り上げて偉そうに笑う。
そんな事を訊いた時点で、行為に落ちると解っているくせに。

予想通り。
そのまま、床に押し倒された。
静雄の自覚しきれていない己の力の強さに、背を床に打ち付けて痛い。



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