リクエスト
□片恋交響曲
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静雄はぽかんとする真広へ、偉そうに言ってのける。
「テメエが覗くのが悪い」
「……」
あくまで無言で突き通そうとする。
しかし、静雄はそれを見て眉を顰めたのみ。
「これで懲りたんなら、もう臨也に手出しするんじゃねぇ」
静雄の声の圧力に怯みながらも、真広は最後の反抗に、と、静雄を目一杯に睨んだ。
「うっせぇ、ヘンタイ」
「あ゛ぁ!?」
額に血管が浮き出た静雄を無視して、真広は自室へ走り去った。
最後の最後に爆弾を投下して行った真広を追いかけようと静雄が足を踏み出すも、
後ろから「シズちゃん!」と半ば呆れたような声で呼ばれ、静雄は仕方なく追いかけるのを止めた。
「真広がいたなら、何で言わなかったの!?」
「鬱陶しかったから」
「両親のエッチ見て嬉しい子供が居るわけ無いでしょ!!」
臨也の言葉に否定は出来ず、うう、と唸りながら口を噤んだ。
本当に、世話が焼ける親と子供だ。
最早どちらが年上だか。
臨也は溜め息を吐くとベッドへ寝転がり、
納得のいっていない顔で隣に身体を置いた静雄へ、苦笑しながら言ってやった。
「明日言っておくからさ、安心してよ」
静雄は未だにぶすりとした顔で、それでも解った、と返事をする。
…誤解して良いのなら、
独占欲、なのかな、と、思ってみる。
見せ付けてやる、とか、考えていたのかも、なんて。
だから、心から怒れないんだ。
疲れが僅かに滲んだ顔で布団に潜りながら隣を見れば、まだ顔を顰めている静雄がいて。
当たり前のような、けれど奇跡みたいな瞬間が、この上なく愛しいと感じた。
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