リクエスト

□片恋交響曲
2ページ/6ページ



「ひぁ…っはぁ、ぁ、シズちゃん…っ」


それは、聞きなれた大好きな声、聞き慣れたはずの、でも違う、臨也の声で。

何が起きているか。
勿論、中学3年生ともなれば、もしかしたら、という予想が出来ないわけじゃない。
ただ、実際に遭遇するなんて考えた事もなくて。
子供が、両親が何をして自分を身ごもったのか、を知ったときのショックに近い感覚を覚えながら、
自分の思い違いであって欲しい、と願い、扉に更に近付いた。

無用心にも扉は僅かに開いており、真広はそっと扉の中を覗き込んだ。

「あ…っん…そこばっか…やっ」

甘ったるい臨也の声が嫌でも耳に届く。
覗き込んで最初に見えたのは、大嫌いな静雄の背中で。
痛いくらいに高鳴る胸を押さえて、更に奥へと視線を運んでいけば、
浮き上がった臨也の脚、暗闇で上下する胸、赤く染まった顔が嫌でも目に入って。

「それだけ感じておいて、イヤ、はねぇだろ?
これだけナカ、ひくつかせて、今更恥じても無駄だ」

静雄の吐息の混じる声が、臨也に囁く。
途端に、一際大きくベッドの軋む音が響き、同調するように、一層甲高い臨也の喘ぎが漏れた。

視線を逸らすことも出来ずに、
真広はただ、揺れる静雄の背と、間断なく零れる甘い声を聞いていた。
離れた方が良い、そう解っているのに、身体は固まって動かない。
よりによって、クライマックスが近いこんなタイミングだなんて。
夜更かしなんかしなきゃ良かった。素直に部屋に戻れば良かった。
後悔しても遅いのだけれど、後悔しながら覗いている自分もどうかと思う。
頭の先から頬、耳まで真っ赤になるのを自分でも感じながら、ばれないようにただ息を潜めた。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ