リクエスト

□片恋交響曲
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真広は、自分のしたことを後悔した。
夜更かしなんかしなきゃ良かった。素直に部屋に戻ればよかった。
でも後悔と同時、動き出せなくなった自分も居て、
早く終われ、そう願いながら、扉越しに最愛と最悪の息遣いを聞いていた。



と言うのも、真広は深夜までゲームに勤しんでいた。
何時間やったかは分からないが、既に深夜2時を回っている。
同じ日に買った友達とどちらが先にクリアーできるか、という争いをしているのだが、どうにもボスを倒せない。
ジュースとポテトチップスをお供に闘うものの、ボスステージに来て倒され続け、
何度目かのコンティニュー画面を見て溜め息を吐いた。

「あと少しまで行くんだけどな…」

呟き、自棄酒のようにジュースを呷る。
気がつけば、ペットボトルは空。
腹に水が溜まっているような感覚がして、それに伴うように尿意が下腹部を擽った。

トイレに行って、もう1回プレイしてから寝よう、
そう思うと、真広はトイレへ向かった。


「ラスト1回だから奇跡でも起こんねぇかな」

トイレから出ながら呟き、そのまま部屋へ戻ろうとして、
…ふと、思い立つ。

真広の両親である、臨也と静雄。
臨也が大好きな分だけ静雄を嫌う真広は、二人が同室なのが常々気に食わないでいる。
以前臨也に宥められ、執着のような感情を綺麗さっぱり捨て去ろうとしたのに、
静雄の唐突な行動に、諦めと同様、対抗心が渦を巻いている。

二人が同じベッドで寝ているのは知っていた。
くっついて寝ていたら、引き剥がしてやる。
そう思いながら、真広はゲームの事など忘れて二人の寝室へ向かった。



あと部屋まで数メートル。
そんな時、僅かに聞こえる音に気がついた。

「……?」

耳をそばだてながら、ゆっくりと部屋に近付いていく。
足音を忍ばせて、あと数歩で部屋の前というところで、
真広は漏れてきた声に思わず立ち竦んだ。



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