リクエスト

□Kiss my Dream 1
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恐る恐るにその体操着を捲くり…
思わず、息を飲んだ。

鎖骨下辺りから続く、白い肌に散らばる青紫の痕。
それが刻まれた人物が痩身だからか、胸が苦しいほどに痛々しい。
涙が零れるような感覚に襲われ、きつく瞼を閉じてそれを堪えた。

明らかに殴られたような痣。
その青紫をなぞるように、指を置いた途端。

びくん、と、臨也の身体が跳ねた。
起きたのかと思ったが、閉じられた瞼を見るとそうではないらしい。
だが、眉根が、きゅ、と寄り、苦痛を耐えるように歪んだ。

「――っ」

その唇が、何か言葉を紡ぎ、ひくり、と喉が動く。
ただならぬような状況に困惑する静雄は、何も出来ずに臨也を見つめた。

「…やめ…やだ…いやだ、」

途切れ途切れに呟かれる言葉は、段々と大きくなる。
まるでそれに合わせるように、その目尻から涙が零れ、枕に淡い染みを作る。

やめて。
そう、臨也の唇がはっきりと紡ぎ、その手が震える。
ハッとした静雄は、思わず臨也の肩を揺さぶった。

「臨也!」

起きろ、そうひたすらに思いながら。

思いの外浅い眠りだったのだろう、臨也の目は直ぐに、ぱちり、と開いた。
…しかし、夢と現実が混合したのだろう、
静雄を見るや否や、その整った顔を引き攣らせ、肩を強張らせた。

「や、やだ、やめて…ッ」

涙が新たに道を作る。
震える肩を掴むばかりで成す術も無く、
静雄は無意識のうちに臨也を抱き締めていた。
酷く嫌がる臨也を強く抱いて、耳元で囁く。

「臨也、俺だ。…臨也、」

――ふ、と、臨也の動きが止まった。
震える声が、「シズちゃん?」と、弱々しく紡ぐ。
ああ、と返事をして、未だに震える肩を抱き締めてやれば、
臨也は安心したように静雄の肩に顔を埋めて、しゃくりあげだした。



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