リクエスト

□Kiss my Dream 1
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体育の授業中、臨也が突然倒れた。

力が並外れている、なんて理由で、静雄は保健室まで運ぶ役を不服にも仰せつかってしまった。
実際は、普段体調を崩さない臨也が突然倒れるなんて予想外だったため、
欠片も心配していないか、と訊かれればそうではないと答える他は無いのだが。



意識を失ったままの臨也を背中に抱えて保健室まで来る。
しかし保健医は居らず、保健室の扉が開いているだけだった。

「失礼します…」

申し訳程度の挨拶をして保健室へ入り、臨也をベッドへ寝かせる。
臨也はと言えば意識を失ったまま、瞼を閉じていた。
大きな衝撃を与えれば起きるかもしれないが、顔色が悪い気がしてそれは憚られた。
でも、まるで自分が心底彼を心配しているように感じられるのが気に入らず。

「呑気に寝やがって…」

小さく溜め息を吐いて自身への弁解にそう呟くと、
どうせだから自分も休んでいってやろう、と静雄はベッドの隣にある椅子に腰掛けた。

普段は敵対心剥き出しで向き合う相手。
そんな奴の寝顔をまじまじと見ることはそう無く、思わずじっと見つめた。
漆黒で艶やかな髪。
長い睫毛に縁取られた目。
赤く熟れた薄い唇。
容姿端麗。眉目秀麗。冷たくすら感じるほど整った顔立ち。
確かに、あの嫌味ったらしい笑みを浮かべてさえいなければ、
中身は置いておいて、見た目は好青年に違いないのだろう。

もっと食えよ、なんて思いながら細い四肢をまじまじと眺めていると――
ふと、目に映った青紫。
それは、ベッドへ寝かせた時に上がってしまったらしい体操着の裾から覗く腹部にあった。

一瞬、どきりと胸が高鳴る。
普通に生活していて、こんな怪我を負うものなのだろうか。
しかも、青紫に変色するような痣なんて。



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