60万打小説

□Teach me how to love
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「…は?」

思わず素頓狂な声が零れる。
言葉を咀嚼しきれず間抜け面の静雄を、臨也は照れるでもなく嘲るでもなくじっと見上げる。
…馬鹿にしているのか。真面目なふりをすれば、愚直な俺は騙されるとでも。ふざけるな。

臨也の、こちらを真っ直ぐ見つめる瞳。その視線から逃れるように、臨也の視界を掌で塞ぐ。
何、なんのつもり。僅かに焦燥の混ざった声に、それも演技だろ、と呟いて、首筋に噛みついた。

「ひっ、あ…!?」

掌の下で、長い睫毛が震える。擽ったさを残すその感触は、同時に漏らされた何処か情欲をそそる声とは結び付かない。

俺を嵌めようとしたこと。馬鹿にしようとしたこと。それを悔やめばいい。大嫌いな奴に犯されれば、嫌でも反省するだろう。
…心の中で呟いた声は、本心だったのか、今から及ぼうとしている行為への理由付けだったのか。
…けれど、臨也に口付けされたことによって性欲を煽られたことは嘘ではない。一度は働いた理性も、ストッパーを外す理由を作ってしまえば簡単に剥がれ落ちる。

「え、ちょっと、シズちゃ…っ、ぅ、や…っ」

噛みついた首筋から滲んだ血を舐めとり、不安げに傾いた耳へ舌を這わせば、臨也の身体はびくりと跳ねた。 牙を立てれば、息を飲んだ小さな悲鳴が零れる。
抵抗しようともがいた手は、耳を甘噛みしながらシャツの裾から覗いた脇腹を撫でれば、震えて力を無くした。
普段なら、嫌なことであれば何をしてでも逃げようとするだろうに。
僅かな違和感と罪悪感を覚えながらも、それが静雄にとってこの行為を中断するだけの理由にはならず。
裾から忍ばせた指先で漆黒のシャツを胸元まで捲り上げれば、雪白の肌が外気に晒された。
その艶かしさに誘われるように、そこに存在を主張する淡い桃色の蕾を摘めば。

「ひっ…ん、やだ…っ」

吐息混じりの声が囁いた抵抗。けれどそれに加虐心を煽られて、それを捏ねるように指に力を入れれば、色めいた喘ぎが漏れた。
もっと聞きたい。もっと堪能したい。
当初の嫌がらせという目的など忘れ去って、淫欲に任せて臨也の目を塞いでいた手を退ければ。

湿り気を帯びた長い睫毛に縁取られた、唐紅の瞳が、静雄の瞳を見詰めた。
ずくり、と胸の奥が疼いて、身体が熱くなる。
堰を切った本能と同時に、感情が鈍くなって。

「シズ、ちゃん…!?っ、や、待って!!」

スラックスのフロントを力ずくで引っ張った。ジッパーごと弾けたそれをそのまま脱がすと、既に熱く起立した自身を奥まったそこへあてがった。
嫌だ、と抵抗する声は耳に届けども意識に染み入ることはなく。

「ひっ…い、ぁ…っ!や、だあ…!っあ!ぅあ…っ」

痛みを孕んだ苦しげな声。
その悲鳴を聞きながら、自身の快楽だけを貪った。


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