60万打小説

□君を殺すまで
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運命の出会いというものが本当に存在するなら、それは素敵だ。
だからと言って、俺とシズちゃんが出会えたことが運命かと問われたら、俺は肯定なんか出来やしないと思う。
運命なら、もっといい出会いがあったはずだ。最早これは宿命。
こんなことシズちゃんに言ったら、怒られるかもしれないけれど。



「臨也、なんかあったか?」

静雄の唐突な言葉に、臨也ははたと動きを止めた。
それから、にこりと笑って見せる。自然に、自然に。

「何かって何?心配してくれるの?」

「…何なんだよ手前」

まるで好奇心の旺盛な子供のように顔を寄せれば、静雄は照れを滲ませながら臨也から顔を逸らす。
その何処か愛らしい反応に、臨也は作り上げた笑顔が本物になるのを感じながら寄せた身体をそのまま落ち着かせた。
そうすれば、静雄は顔を赤らめて眉間に皺を寄せながらも臨也を横目に見やる。
こうして傍にいられる時間が愛しくてたまらない。

「秘密」

ふざけたように言えば、静雄はやはり顔をしかめながら渋々と頷いた。


付き合いはじめて4年。
出会いは高校で、確かに偶然という必然だったのかもしれない。
喧嘩ばかりしていたのに。気付いたら好きになっていたなんて、 まるで何処かの純情な少女みたいだ。自分で言うのもなんだけれど。
そこで突然静雄から告白されるという奇跡にも似た出来事があり、こうして今に至る。
けれど、これは運命なんて綺麗な言葉じゃない。

シズちゃんにとって、いいことなはずがない、から。



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