50万打小説

□君を失いたくない
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「平和島静雄を野放しにしてたのが問題だったな…」

「本当に腹立つっつうか…
でもそういやぁ、前に手出した時よりも弱くなかったか?見張りとやり合っただけでボロボロだったしよ」

「確かに…
もしかしたら、今力がないんじゃねぇのか?そういう噂も聞いたことあるし――
信じてなかったけど、あながち嘘じゃねぇのかもな…」


***

互いに甘ったるい告白をして、両想いだと気づいて、数日。

「君たち、どういう風の吹き回しだい?」

「新羅には関係ないよ。それとも何、羨ましいの?」

「羨ましくはないよ。ただ、何が起きたのか全く理解できないだけで」

新羅に加えて門田が目を丸くするのも無理はない。今までは喧嘩ばかりしていた二人が、当たり前のように会話しているのだから。

――結局二人は付き合うに至った。とは言っても仲良く話す程度で、特に恋人同士らしいわけではない。
けれど、二人にとって大きな進歩だったのは事実。何せ、普通に会話したことすら皆無に等しかったのだから。

「なるようになったんだろ」

「まぁそうなんだけどさ…静雄の口からそんな言葉が出るとは思わなかったよ」

新羅の言葉に、臨也と静雄は目を合わせる。ふ、と微笑んだ臨也は愛しくて、静雄も同じように微笑んだ。



そんな、幸せと形容するに等しい日々のことだった。

「やべぇ、忘れ物した」

「はぁ、馬鹿じゃないの」

「うるせぇ」

静雄は、特別教室への移動中に教科書がないことに気がついた。
今から戻っても十分間に合う。今まで授業をサボったり居眠りしたりを散々してきたから、忘れると後が面倒だ。
取りに行ってくる、と軽く手を振れば、じゃあ先行ってるね、と新羅と門田、臨也は先に教室へ移動することになった。
反対方向へ走り、教科書を持って再び同じ道を走っている時。

がん、と身体が殴り倒されて、口に宛がわれた布に意識が遠退いて、暗転した。


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