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臨也は一人、パソコンの前で唇を噛む。
いくら姿形が同じでも、あれは俺じゃなければシズちゃんでもない。
分かってる。分かってるから苦しい。
画面に映る二人は、ただただ幸せに満ちていて。
ここで二人を恨むのはお門違い。そんなこと知っているのに。
頬を滑った雫は、顎を辿って机に落ちた。
***
「津軽、今日はメンテナンスするから電源切るよ」
臨也の言葉に、津軽は素直に頷いた。
メンテナンスは好きじゃない。どうしてもサイケに会う時間が遅くになってしまう。
けれど調子が悪くなっても困るし、仕方ないのだろう。
そう自分を納得させ、津軽は所定の位置に行くと電源を落とすために瞼を閉ざす。
…昨日は、あんなことをしてしまったから、やはり少し顔を合わせ辛い。けれど、会えないのはもっと辛い。
今日は何をしようか。二人で何を話そうか。きっと今日も楽しくなる。もっとサイケが好きになる。
「電源切るよ、津軽」
「はい」
返事をして数秒。
津軽の意識は闇へ落ちた。
その頃、サイケはいつものように津軽を待っていた。
きっと、津軽が来るまでまだ3時間はある。けれど、一日にしてみれば3時間なんてちっぽけだ。
それまで寂しいけれど、だからこそ津軽が楽しみになる。
きっと、きっと。
…と、不意に扉が開いた。
まさか津軽が、と思い、わくわくしながら振り返るも。
「や、久しぶりだねサイケ」
「…いざや……」
「いつから主人のこと呼び捨てする悪い子になったんだろうねぇ」
そこにいたのは臨也だった。
けれど、思っていたよりも怖がっていない自分がいた。きっと、津軽に臨也がいい人だと教えてもらったから。
けれど少し、胸はぎゅうと苦しくなった。
「なんできたの?めんてなんす?」
どうにか平然と返す。しかし、以前と違うのはサイケだけではなかった。
臨也は冷笑をその顔に貼り付けると、サイケに言った。
「サイケはもういらないよ」
一瞬、思考が停止した。
いらない。それはどういうことだ。
笑おうとしたけれど顔は固まるばかりで、笑顔は酷くひきつった。
「いらない…?さいけはいらないの…?」
「いらないよ。だから今までのデータを削除するために来たんだよ」
データの削除。
設定されたデータを、そして積み上げてきた記憶を、全て無に返すこと。
それは、津軽との日々を消すこと。
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