1周年小説

□画竜点睛
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つまらないつまらない学校に来る、ふたつめの理由。
シズちゃんと喧嘩するため、だ。
まるで水面に水滴を落とした時の一瞬の波紋のように、喧嘩をしている間は、つまらない日常を歪められる。
…なのに。

自分の席へ戻れば、門田が首を傾げて臨也に問いかける。


「最近、臨也と静雄喧嘩しないな。何かあったのか?」


――そう。最近、全く喧嘩をしないのだ。
今までなら、挑発なんてしなくてもちょっとした会話に腹を立てて怒鳴り立てた挙句殴ってきたくせに、最近は挑発をしても先刻のように顔をしかめて歩き去るだけなのである。
何故か、なんて知るはずがないし、知る由もない。
…けれど、気になって仕方がない自分がいるのも事実。

「…何もないし。いつも通りだよ」

「だよな。臨也が何か変わった態度取った記憶はないし。
…逆に、それが嫌になって喧嘩を避けてるとかか?でも別に、何だかんだ静雄も喧嘩を楽しんでるように見えてたけどな」

「…知らない」

そう呟いて、臨也は机に突っ伏す。
喧嘩が嫌になって避けてるなら、もっと早くから避けていてもおかしくない。
それに、楽しんでいるなら避ける必要もないはずだ。
静雄は、時々突飛な行動を起こすけれど、基本は単純で分かりやすい。なのに、今は霞がかったみたくわからないのだ。
――それに。

それが酷く気にかかって、やきもきしている自分が一番、分からない。


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