1周年小説

□画竜点睛
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最近、シズちゃんの様子がおかしい。

…いや、シズちゃんがおかしいのは今に始まったことじゃないけれど。
最近、それに磨きがかかっておかしいのだ。露骨すぎて、嫌になるくらいに。


毎日変わらない学校。毎日つまらない授業。毎日決まった時間に決まったことをする、つまらない生活。
それでも臨也は、いつものように学校にくる。このご時世、学歴が無いなど不利に違いないからだ。

…と、もうひとつ、理由が無くはない。

「臨也、おはよう」

教室に入れば、門田に声をかけられる。席が前後のため、同じように、おはよう、と返しながら荷物を置いた。

「今日の六時間目、全校集会だっけ?」

「ああ。サボるなよ」

「えー、寒いしやだなぁ」

「皆同じだろ」

門田の苦笑に唇を尖らす。そうすれば門田は困ったように眉尻を下げて、観念しろ、と臨也の頭を小突いた。
門田に言われれば仕方がない。そう思いつつも、教室ですら寒いのだ。体育館など更に寒いに決まっている。
まだ文句を言いたい気分ではあったけれど、いつまでもぐずるほど子供ではない。諦めて、冷たい指先を掌に握り込んでいれば。

ガラ、と乾いた音とともに扉が開き、見慣れた姿が入ってきた。
金髪に着崩した制服。大人しそうな顔は臨也の方へ向くと、僅かに顔をしかめて自らの席に着いた。
平和島静雄。名前と中身の不一致はこんなにも酷くなるものなのか、と思う奴。
臨也はその後を追い静雄の席に駆け寄ると、ニコリと笑って見せる。少なくとも、静雄には鬱陶しいこと他ならない笑顔で。

「おはよ、シズちゃん」

「……」

「今日も不機嫌な顔してるね」

「…手前のせいでな」

「酷いなぁ、まだ何もしてないのに」

そう言えば、静雄はあからさまに顔をしかめた。
ああ、もう、何なんだよ。
既にそう吐き捨ててやりたい気持ちになりながらもそれを押さえ込むと、臨也は笑顔のまま静雄を覗き込む。

「昨日もちっさな暴力団潰したんでしょ?相っ変わらず化物なんだから。」

――き、と鋭い瞳が此方を睨み。
静雄は席を立つと、臨也を押し退けるようにして教室を出ていった。

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