1周年小説

□温故知新
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「…どうしてそんなに俺に構うんですか、臨也さん」

「いや?好きだなぁ、と思ってね」

頭上から降ってくる臨也の楽しげな声音に、正臣はわざとらしく眉をひそめる。
正臣のかけるソファ、そしてそれに覆い被さるようにしている臨也は、その歪んだ表情にすらも微笑み返した。


正臣の知り合いである折原臨也は、裏社会で名を馳せる情報屋だ。
かつての一件で絡み、散々彼の手中で玩ばれ。一時はこの上なく憎みもした。
…しかし、過去があれば現在があり――臨也と正臣は、切れない縁になっていた。腐れ縁、というのも煩わしくなるほどに。


「好きとか…適当なこと言わないでください」

「適当じゃないよ?俺はいつだって本気さ。ねぇ?」

臨也のしなやかな指が、正臣の頬を滑った。触れた指輪の冷たさを肌に感じて目を細めれば、臨也は口元を緩める。それすらも何処か妖艶に見えてしまうのは、少なからず臨也の相貌が整っていることは否定できないからであろう。

「気持ち悪いので止めてください」

「酷いな、――散々頼ってきたくせに」

その言葉にぎゅうと胸が苦しくなったのは、肯定するしか道がないから。
勿論、彼の言葉は全てを見越した上の台詞だ。自分が幾ら取り繕ったところで、滑稽にしかならないのも承知している。

「…その節はお世話になりました」

「ハハハ、心にも思ってない感謝をどうもありがとう」

――ああ、本当に絡み辛い。何を思っているのか、全くもって理解できない。
だからこそ、畏敬を覚えるのかもしれないのだけれど。


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