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□落下点
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「臨也ぁあああ!!」

「奇遇だねぇ、久し振りに来た時に会うなんて、もしかしてシズちゃん俺のこと監視でもしてるの?」

池袋の一角、そんな会話が繰り広げられる。
池袋最強と名高い平和島静雄と、池袋で起こる静かな抗争の裏の首謀者である折原臨也。そんな何処か人間離れした二人は、敵対関係にあった。
そんな二人の喧嘩を力ずくで止められる者など露西亜寿司の黒人くらいのもの。
今現在露西亜寿司から離れた場所で喧嘩している二人を止めに入る者などいるはずもなく、夜ともなれば人通りの極めて少ない裏通りを舞台とした喧嘩を繰り広げていた。

「手前なんか監視する暇があるなら、煙草吸ってるに決まってるだろ!!」

「はは!シズちゃんは俺のために早く死んでくれるんだ!嬉しいねぇ!」

「はァア!?ふざけんな!!」

そんな馬鹿らしくすら聞こえる会話をしながら、二人は走り回る。
後ろから飛んできた標識を避け、更に狭い通りへと突き進む。静雄を撒こうとするも彼がそんなに簡単に引き離されるはずもなく、臨也も武器であるナイフを片手に逃げ走る。

「ちょこまか逃げやがって、ノミか手前はよぉ!!」

「煩いな、身体ばっかり大きくなっちゃった、残念なシズちゃんに言われたくないなぁ!」

お互いに貶しあうのは当然。罵詈雑言を吐きながら、付かず離れず鬼ごっこは続く。

――そう言えば、あの日もこれくらいの時間にこんな風に喧嘩をしていた。
ふと思い出したのは、随分前の出来事。
煌めくネオンから疎外された路地裏。いつものように喧嘩をして、その最中だった。
曽根崎心中。切ない悲恋話を持ち出したのは。

…シズちゃんは、何だかんだモテる。
自分は独り――そう思っているのは、静雄本人だけなのだ。彼の周りには、上司、後輩、知り合い、沢山の人が溢れている。
きっと俺なんかよりも、ずっと。
人間を愛している俺なんかよりも。

…でも、知らないだろ。
そんな独りぼっちな俺が、シズちゃんのことを好きだということなんか。

だから、悔しくて。虚しくて。
俺は君には嫌われているのに、俺だけ君が好きなんていうのは不公平だ。
そんな思いでけしかけた唇。嫌がられるのかと思えば――彼からは、更に濃厚な口付けが返ってきたのだ。

『臨也を殺したら死んでやる』

結局、その言葉の真意は分からないままだけれど。
僅かな期待と、不安。


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