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□CALL FOR ME.
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忘れて欲しい。少なくとも、臨也にとっても心苦しい記憶なのだから。
無視された。大嫌いだって、と聞かされた。思い切り殴られた。好きだと気がついた。心の底から嫌われていると思った。
…なのに、助けに来てくれた。心配してくれた。辛かったけれど、静雄が愛してくれた。
電話越しに呟かれた愛しい声も、痛いほどに抱き締められた温度も、大切な記憶。

「まぁ、でもさ――それだけ、俺は愛されてる、ってことだよね?」

「は!?」

真っ赤な顔で叫んだ静雄は、面倒臭かったから、と誤魔化した彼と何一つ変わらない。
臨也は、静雄の首に頬を寄せて、嗅ぎ慣れた優しい匂いと染み付いた紫煙の香り、そして身体中に響く鼓動を聞いた。
何だよ、と半ば動揺しながら言った静雄から背に伸ばされる手は、割れ物を触るように繊細で。


「そうやって、ずっと俺を求めてよ」


奏でるように、小さく囁いた。
響く鼓動が加速する。硬直した静雄の背をぎゅっと抱き寄せて瞼を閉ざせば、一層に優しい香りが鼻を擽った。息遣いまで聞き逃すことのない距離。

「いつでも電話して。会いたくなったら会いに来て。俺は何処にも行ったりしないから。シズちゃんの傍にいるから」

もっと独占してくれたって良いのに。そう言ってはにかむように笑った臨也の頬は、柔らかな赤を纏って静雄の胸を圧迫する。
独占したい。傍にいたい。どんなにたわいない会話だって、手を繋ぐだけだって構わない。

ぎゅう、と一際強く抱き締めれば、痛いよ、と言いながらも、臨也は柔らかく笑った。
あの頃の自分は、こんなにも臨也のことが愛しくなるのを想像しただろうか。

「シズちゃん、シズちゃんの家行こう」

「あ?…別に良いけど」

ようやく手を離せば、回りの視線があることに気がついた。
ね、だから、と恥ずかしそうに俯いて歩きだした臨也に追いつき、帰らなくていいのか、と尋ねれば、いいよ、と口ごもりながら言い。

「キスしたい、から」

独り言のように紡がれた、そんな甘い言葉。
今すぐに口付けをしてやりたい衝動に駆られながらも、今そんなことをすれば拗ねられかねない。きっと、そんな姿も可愛らしいのだろうけれど。
じゃあ行くか、と引いた掌はしなやかで温かで。
驚いて震えた指は、優しく握り返された。




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