five days in mirror

□俺に大切なものを教えてくれた。
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自分は折原臨也であって、“折原臨也”ではない。
今日は一日中そんなことを考えていた。

「帰るか、臨也」

「あ、うん」

静雄に呼ばれて、臨也は鞄を抱えるとその背を追った。待っていてくれた静雄の隣へ付き、下駄箱で靴を履き替えると校門を抜け、学校を出る。
見慣れた風景は、何一つ変わらない。人でごった返して、この中にも臨也のいた世界と少しずつ違う人がいるのだろうかと、漠然と思う。

「誕生日もう少しだな」

「…うん」

「何か欲しいものとか行きたいところあるか?」

「…うん」

「……臨也?」

名前を呼ばれて我に返った。ごめん、ぼんやりしてた、と苦笑して見せると、静雄は僅かに思案したように視線を足元へ運んだものの、気を付けろよ、と臨也の頭をくしゃりと撫でた。

つきり。胸に走った痛みは、些細であれど息が詰まる。
この手に愛されるべき奴は、此処とは違う世界にいる。
全く同じだからこそ、その相違が胸に痛みを与えて、臨也をこの世界から切り離そうとする。
そんなことをされれば、居場所がなくなってしまうのに。


臨也宅の玄関に着き、臨也はにこりと笑って見せた。

「じゃあね、また明日」

「…臨也、待て」

引き留められ、臨也はことりと首を傾げる。
なぁに、と問い掛ければ、静雄は伸ばした手を臨也の頬に添えた。

どきり。胸が跳ねる。
見る間に静雄の顔が近付いて、呼吸すら分かる距離になり。


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