five days in mirror

□鏡うつしの5日間は、
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…そして、冒頭へ至る。
喧嘩相手の静雄が臨也へ大丈夫か訊くなど、異常にもほどがあるだろう。そんなに酷い打ち付け方をしていたのだろうか。

「…大、丈夫」

差し出された手を、素直に取った。静雄の手にこんな風に触れたことなど、今までに一度もない。
そのまま立ち上がれば、静雄は臨也の手を握ったまま、小さく「ごめん」と呟いた。それこそ衝撃的で、臨也は瞬きすら忘れて静雄に引かれるがままに教室に着いた。


丁度授業が終わり、二人は教室に入る。
…そこではっとした。手を繋いだままだと言うことに。
同じクラスには、門田も新羅もいるのだ。見つかったら何を言われるか分からない。それくらい、シズちゃんだって分かるはずだ。

「ちょっと、シズちゃん…!」

「あ?」

振り返った静雄は全く気にした様子はない。まさか、無意識のうちに握ったままと言うことだろうか。
周りから変な目で見られることは必至で、臨也は恥ずかしさも相まって手を振りほどこうとした時だった。

「また授業さぼって、君たちは」

聞き覚えのある声にバッと振り返れば、紛れもなく新羅だった。二人の仲の悪さは人一倍知っている、数少ない友人。
見つかる、と更に手を離そうとするも、静雄の手は臨也の手を掴んだまま一向に緩みもしない。
おかしい。おかしいってこれ!!
もしかしたら、自分は気を失っているのかもしれない。それで、夢でも見てるんだ。そうじゃなければ、こんなの、こんな状況……

「煩ぇな、色々あったんだよ」

「色々?まさか喧嘩でもしたの?珍しいね、君たちが。
で、もう仲直りしたんだ?」

「……黙れ」

そこでようやく静雄は手を離した。緊張からか羞恥からかはたまた別の感情からか、胸がバクバクと激しく波打っている。
歩き去った静雄を尻目に動けないでいる臨也へ、楽しそうな顔をする新羅が問いかけた。

「で、どんな用件で喧嘩したの?」

「……いつもみたいに…俺がシズちゃんに不良を仕向けて…」

「え?いつもみたいに、って…そんなこと一度もしたことないじゃないか」

――どういうことだ?
頭は混乱しながらも、決して現実的ではない答えを導きだしていた。
ありえない。けれど、首なしライダーや怪力、その他諸々が存在する世界なのだ。何があってもおかしくはない。

「…シズちゃんが優しすぎて気持ち悪い、よね…?」

確かめるように問いかけた臨也を、新羅は笑った。
心の底から、臨也の言葉を奇妙だと思っているかのように。


「何言ってるのさ、いつもラブラブだろ?
去年の臨也の誕生日から付き合って、もうちょっとで1年になるくせに仲良しすぎて、こっちが気持ち悪いくらいだよ」


…おかしくはないのだ。
鏡を媒介として、“折原臨也”と“平和島静雄”が付き合っているこの世界に飛ばされたって。

「気持ち悪い、なんて酷いな、新羅…。だって、シズちゃんが優しいんだから…」

「ノロケかい?それは」

臨也は、その言葉に笑って、まぁね、と答えた。



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