リクエスト

□君色依存
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臨也は、自室の扉を叩く音に目を覚ました。
出て行くのが面倒くさい。でも声を出すのも面倒くさい。
退散するか、勝手に入ってくるか、どちらかにしてくれればいいや、
そう思っていると、扉の外から声が響いた。

「臨也様、入らせて頂きます」

…その声に、臨也は跳ね起きた。
あいつだ。
父さんの執事の、あいつ。

扉が開き、人が入ってきた。
やっぱり。
臨也は跳ねる胸を押さえつけて、嫌そうな表情を作り上げた。

「…なに、シズちゃん」

入ってきたのは、モノトーンを纏う一人の執事。
そいつは扉をゆっくりと閉めると、臨也の態度に眉を顰めた。

「…旦那様が、今日のパーティーは出席しろ、って言ってた」

「はぁ?やだ、面倒くさい」

自身の父親の命令を告げに来た静雄へ嫌悪を滲ませた目を向けたものの、彼は動じる様子も無い。
親の言う事は聞け、とでも言うように臨也は睨まれ、
「おっかないなぁ」とわざとらしく言ってやった。

静雄は、大手企業を立ち上げた臨也の父の執事だ。
だから、俺の執事じゃない。

「あのさ、シズちゃん。
俺だって一応、シズちゃんを顎で使って良い関係なんだよ?
…敬語くらい、遣えよ」

睨みをきかせながら臨也はそう呟く。
しかし静雄は鼻で笑ったのみ。
手前の言う事を聞くくらいなら辞めた方がマシだ、とでも言うような瞳で、臨也を睨む。
臨也も動じる事は無く、静雄へ嘲笑を向けた。

「本当にさ、辞めればいいと思うんだよね、
主人に忠実なのはいいとして、じゃあ主人の身内の、しかも俺だけに冷たいって、それはおかしいでしょ」

臨也は、随分前からの静雄の態度にケチをつけた。

静雄は臨也だけに冷たい。
入ってきた最初の頃はそんなことは無かったのだが、ある日を境に急に冷たくなった。

「じゃあ、旦那様に言えば良いだろ」

「それは嫌なんだよね、何か、父親の虎の威をかりてるみたいで、好きじゃない」

臨也は、用意していた答えの1つをそのままに言う。
静雄はやっぱり、眉を顰めた。




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