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□白昼夢の言葉を厭う
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『――好きだ』
白昼夢かとすら思うその言葉。
浅い眠りの最中意識に染み入ってきた声は、酷く切なげで愛おしそうな響きを持ち、確実に眠りが覚めた後の臨也の記憶にも鮮烈に残っていた。
静雄の家であるこの場所に来てから、もう幾月日が経った。
未だに部屋から出されることの無いまま、静雄の性奴隷のような扱いのまま。
勿論、外には出たい。けれど、外から鍵をかけられた部屋の鍵の解除など出来るはずもなく、況してやこの家の家主のような人並み外れた怪力など当然持ち合わせてはいない。
最近は諦めも生まれてきたほど――しかし、このままでは自分がもたないのは嫌でも分かる。
何か彼の弱味を握られたら、若しくはナイフなど彼に対抗しうる物を手に入れられたら、脱出も可能かもしれない。
…事実、静雄にここに監禁されている理由すらも分からないのだ。解決の糸口も見えないままでは、どうせ無様に暴れることしか出来ない。
理由を知りたい。心情が変わるのも、脱出の手口を見いだすのも、役に立つに違い無いだろう。
でも、何をどうすれば――
カチャリ、と鍵の外れる音が不意に響いた。
静雄だ。他の奴が来ることなどあり得ないだろう。
この後の展開など容易に想像がつき、また痣が増えるのか、と溜め息を吐いた。
「はっ…ぁ!く…はっ……」
ただでさえ呼吸が荒くなっているのに、首を絞められて息も絶え絶えになる。わざわざ気を失わない程度の力で絞められるものだから、酸素の行き渡らない頭はぼんやりとしてただ快楽だけを追うようになっていく。
抵抗しようにも手首は指先が赤紫になるほどに紐で強く拘束されていた。
そんな臨也をひたすらに無表情に見詰める静雄の表情は、首を絞められるよりも縛られるよりも怖くて。
何を考えて、こんなことをしているのだろう。
性欲処理だから?喧嘩相手を見下せるから?鬱憤が晴れるから?それとも――
不意に頭に過ったのは、つい先日の記憶。
もしこの記憶が単なる夢ではなく、本当に彼が囁いた言葉だったら?
「何、考えてやがる…っ」
「ッあ!ひ、ぃあ、や…!」
途端に静雄のものが奥深くまで突き刺され、腰が浮いたまま臨也は甲高い嬌声を溢す。そこで思考は断たれ、臨也は一直線に快楽の階段を駆け上がった。
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