2nd

□ダンデライオン
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「まぁ、なるようになるのを見守るだけですから。折原さんの言葉が嘘じゃないことを、祈りますよ」

下手に静雄の元に向かえば、殺されるのは自分だ。本能がそう警鐘を鳴らす。
大丈夫、奴はこんな奴らにやられるわけがない。黄巾族の一件で拳銃で撃たれた時だって、奴は当たり前のように歩いていたし。
きゅうと唇を噛み締める。それでも不安なのは、どうしてだろう。今度は拳銃を扱いなれている奴だからか。

「信じる信じないも何も、事実ですから」

訳のわからない不安に動揺する胸をポーカーフェイスで塗り潰して、臨也は居心地の悪くなった椅子に座り直した。

「臨也?いたら何だって言うんだよ、平和島静雄」

警戒を押し隠した嘲りの言葉に、静雄は眉間に寄せた皺を一層深くして、目の前で拳銃やらナイフやら物騒なものを持った彼らを睨み見た。
臨也の部下の彼女が示した書類からどうにか見つけ出し辿り着いた一見普通の事務所。
中に入り、臨也は何処だと一言唸れば、一瞬でこのおもてなしになった。

「あの馬鹿を連れ戻しに来たんだよ。戦うつもりはねぇから、早く臨也に会わせろ」

沸々とわいてくる怒りのような感情を声に滲ませて言う。
――と、先刻まで携帯をいじっていた一人が電話を切るや否や。

僅かな破裂音。
体に衝撃が走り、足に力が入らなくなり勢いのまま倒れこんだ。
鈍い痛みの走る足を見れば。
黒のスラックスにぽつりと一つ開いた穴。その周りをじわじわと更に黒く侵食していく生暖かい温度。触れればしっとりと赤黒く染まった指先。
撃たれた。
一瞬停止した思考は、爆発したように回りだす。

「――手前ら、それは犯罪だろ」

「そうだろうな。…っていうか、銃で撃たれて真顔かよ」

にやりと笑った男は、再び拳銃を構える。逃げようと足に力を入れるけれど、まるで鉛のように動かず。
静雄の腰のポケットを掠めて布地を破いた弾丸は、そのまま床に付いた腕に鈍い衝撃を響かせて刺さった。

「ッ!?」

「弾に薬塗っておいて正解だったな。動けねぇだろ。
ああ、その薬は死ぬようなものじゃないから安心しろよ。っても、まぁ…
薬では、って話だけどな?」

下卑た笑みが静雄を見下す。
胸にわくのは、苛立ちと、それよりも大きな不安で。

どうか、どうか、自分はこのままどうなっでいいから。
臨也だけは、無事でいてくれ。


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