30万打小説

□「満たしてよ」
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と、内壁が無理矢理擦られる感覚が無くなり、臨也は気づかぬうちに閉ざしていた瞼を開いた。
こちらを見下ろす静雄はぼんやりと見つめる臨也に気がつき、ばつが悪そうに視線を逸らす。
どうしたの、と問いかければ、静雄は焦ったように肩を跳ねさせ、それから口ごもりながら答えた。

「…いや、何て言うか…痛がってる手前に思うのも不謹慎だけどよ…」

「うん…?」

「…満たされてんな、って……」

恥ずかしそうに紡がれた言葉に、臨也は思わず微笑んだ。
不謹慎だなんて、とんでもない。シズちゃんが満たされているなら、嬉しい。

「…じゃあ、俺も満たしてよ」

囁くように言えば、静雄はぎくりとしたように肩を竦め、だからそうやって、と唸ったものの溜め息で切ると、臨也に向き合った。

「動くから。耐えられないくらい痛かったら言えよ」

小さく頷く。静雄はそれを確認すると、ゆっくりと腰を揺すりだした。
痺れる痛みが下肢に響く。唇からは苦悶の声が零れた。
しかし静雄は、その苦し気な声が甘くなるまで、優しく臨也を慣らす。
気づかぬ間に、沼に沈んでいくように静雄の腰使いの甘い底に沈められていた。
静雄の腰は揺するものから抜き差しするものに変化し、臨也の奥を突く。時より前立腺を霞め、臨也は腰を跳ねさせた。

「ふぁあっ、あ、んっ!ひぁ、あんっ、し、ずちゃ、んんっ…やぁっ、」

「はっ、は…臨也、……ぁ、は…」

ぐちゅぐちゅという音が、室内に響く。恥ずかしさも恐怖も、疾うに消え去っていた。
ただ、静雄の吐息と甘い感覚に、頭が真っ白になっていく。満たされていく。
もっと。もっと欲しい。
肌がぶつかり、甲高い音が嬌声とともに奏でられた。
腰の奥に蟠る熱は、もう限界が近い。押し寄せる感覚に歯向かおうとするも快楽が全ての邪魔をする。静雄の物を離すまいとでもしているかのように、ピストンに合わせて熱く溶けるような内壁が絡み付いた。

「あっ、はあ!、やぁん、もっ、いく!ふあ…」

「臨也、…」

低い声が名前を呼んだ。伸ばされた腕が臨也を抱き締める。臨也は縋るように求めるように、静雄の背に腕を回した。
熱い。溶ける。擦りきれた喉は、掠れた艶かしい声を奏でるのをやめない。

と、静雄の唇が臨也の唇を奪った。
口内に無遠慮に割り込んだ舌は、臨也を掻き乱す。キスにすら射精を促されるだなんて、初めて知った。
そのまま全て、拭い取って、奪い去って。何もかも、染めてしまって。

ぱちん、と身体の何処かで弾けた感覚。身体が震えて、臨也は細い腰を戦慄かせた。

「ふぅう――っ!!」

「ん…ッ」

固く立ち上がった昂りから、白濁が迸った。内壁には熱い温度が注ぎ込まれる。悲鳴は静雄の唇に吸い取られた。
果てた後も互いの体温を求め合いながら、余韻に酔いしれた。



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