30万打小説

□愛慾淘汰
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溶ける。痛みすら無いに等しいその愛撫は、ただ臨也を快楽へ落としていく。
必死で静雄の腰に膝を擦り寄せて、身体を熱くしていくもどかしさを堪えていれば、静雄の指がようやく離れた。
ほっとしているのも束の間。抱えられた脚は静雄の肩に担がれ、臨也は小さく声をあげる。
視界の先に見えたのは、ついさっき抜いたとは思えないほどに勃起した昂りで、臨也は息を飲んだ。

「ゆっくり、だからね」

「…無理に決まってるだろ」

余裕のない低い声がそう囁いたかと思えば、鈴口が震える後孔へ宛がわれる。
滑った先端が臨也の身体に割り込み、そこから走る痛みと滲む快楽に、臨也は喉元から声を漏らした。先の膨らみを飲み込めば後は容赦がなく、抜き差しを繰り返しながらも自らの快楽を追うように臨也を分け入った。
熱い。固い。重い。その存在感は、いくら身体を重ねても飽くことなく臨也の理性を突き崩す。

「ひぁ、あっ、はあァっ、んっ――ッあ!ふゃあ!ゃあっ!」

「んな、絞めるな…ッ、出るだろ…!っく…」

絞めるななんて、無理に決まっている。第一絞めてしまうのは、彼が前立腺やら奥やらを容赦なく掻き乱すからで。
ぐちゅぐちゅと、腸液と静雄の先走りが艶かしい水音を奏で、臨也を耳からも追い立てていく。
腰を回すように内壁を刺激され、臨也の爪先は宙を掻いた。回した腕で必死に静雄の背にしがみつくも、快楽は臨也を解放してくれるはずもなく甘い疼きを身体中に走らせる。

臨也は自負するほどに快楽には弱いが、媚薬のせいか今日の静雄は更に早い。臨也に埋め込まれた杭は固く熱く、呼吸すらも阻まれる。

「…っ、出る、から、絞めるな、って」

「じゃ、あ!ずんずん、しない、でっ、はぁっ、あぁ…っ」

やばい、このままじゃ中に出される、
そう思ったものの、時既に遅し。
静雄の杭が奥まで貫く。その感覚にぎゅうと締め付ければ、静雄の肉塊が臨也の中で跳ね、ただでさえ熱を持った内壁に、蕩けるような熱が奥まで吐き出された。

熱い。

「っひああ!や、らめ!抜いてっ、や、なか!あつい…っ」

目の奥がじんとして、生理的な涙が零れた。
寒くもないのに、内側から広がる熱に身体が粟立ってどうしようもない。腹の奥がぐずぐずと酷く熱を持ち、啜り泣くような呼吸すらも覚束なくする。

「…ごめん、抜くの忘れてた」

「っ…ばかシズっ…、やなのに…っ」

う゛う、と唸れば、静雄は何処か嬉しそうに笑う。嘘吐くなよ、と馬鹿にしたように言われ、臨也は何も言えないまま彼の胸を拳で叩いた。

確かに、嫌いじゃないといえば嫌いじゃない。中に出される熱い感覚は、内側から溶かされていくようで気持ちがいい。
…でも、中で出されると、孕めもしないものを期待してしまう女々しい自分は嫌だった。男同士は、証なんてものは生み出せない。不公平だ、そんなの。
でも、彼が好きで、愛しくて。
女が羨ましくはあるけれど、それなら静雄と今こうしてセックスをするような仲になれていたかと言われれば、違うかもしれない。
――だったらこのままでも充分だ、と思える自分も、確かにいる。


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