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□王子様の探した印は、
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「なら、手前は――」

どきん、と胸が高鳴った。
求められた答えが分からないほど子供ではないし、少なからず期待されているのだと、上げられた彼の顔を見れば容易に想像がつく。
…そんな、仄かに赤らんだ顔で、真剣な瞳で。
分かってるだろ。決まってるだろ。俺は、告白を推すような台詞すら吐いたのに。

「…なんで、言わなきゃなんないの」

「…言えよ」

きゅ、と手首を掴む手に力が籠った。僅かに響く痛みすらも、妙に愛しくて。
酷い。狡い。でも、俺はきっと、もっと狡いから。
今だけ素直になってやらないこともない、なんて、思っているわけじゃないけれど。


「…す、き」


好き。シズちゃんのせいで、こんなにも愛しくなったんだよ。
誤魔化しきれなくなるくらい、好きになってたんだよ。

――唐突に、掴まれた手首が引っ張られる。
驚いているうちに、臨也の身体は静雄の肩に落ちていた。

「え、ちょっと…!」

慌てて彼の腕から逃れようとするけれど、その腕は優しくて、ただ黙ったままの彼に抵抗の気すら失せていく。
彼にこうして触れたのは当たり前に初めてで、胸の高鳴りは収まろうとすらしない。

「…人前だけど」

「これくらい、問題ない」

何処がだよ、と毒づこうとしたけれど、臨也は口を閉ざした。


硝子の靴ほど綺麗なものではないけれど。
ようやく彼に探し出されたのだから、せっかくだから、今だけは。






END
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